連載
「不揮発性DRAM」へのアプローチ(前編):福田昭のストレージ通信(84) 反強誘電体が起爆するDRAM革命(5)(2/2 ページ)
今回から、「不揮発性DRAM」の実現を目指す研究開発について解説する。二酸化ジルコニウムは、その結晶構造から、工夫次第で強誘電体のような不揮発性を付加できる可能性がある。
DRAMセルと同じ材料、同じ構造のキャパシターで残留分極を実現
そこで同研究グループは実際に、「二酸化ジルコニウム/アルミナ/二酸化ジルコニウム(ZrO2/Al2O3/ZrO2)」の3層構造(ZAZ構造)を絶縁膜とするキャパシターを試作した。
試作したのは、二酸化ルテニウム(RuO2)をトップ電極、窒化チタンをボトム電極とするキャパシターである。外部電圧と分極電荷量の関係を測定したところ、外部電圧がゼロのときに、残留分極がゼロに近い状態と、残留分極が一定の電荷量を備えた状態の、2つの状態を実現できた。
左は二酸化ルテニウムをトップ電極、窒化チタンをボトム電極、絶縁膜をZAZ構造とするキャパシターの断面構造。右は試作したキャパシターの外部電圧(横軸)と分極電荷量(縦軸)の関係。出典:NaMLabおよびドレスデン工科大学(クリックで拡大)
試作したキャパシターは平面状である。最近のDRAMキャパシターは、平面状ではなく、円筒形の3次元構造をしている。そこで同研究グループは46nmのDRAM製造プロセスを利用し、ZAZ構造の3次元キャパシターアレイを試作した。その結果は後編でご紹介したい。
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