誰も知らない「生産性向上」の正体 〜“人間抜き”でも経済は成長?:世界を「数字」で回してみよう(44) 働き方改革(3)(7/10 ページ)
「働き方改革」に関連する言葉で、最もよく聞かれる、もしくは最も声高に叫ばれているものが「生産性の向上」ではないでしょうか。他国と比較し、「生産性」の低さを嘆かれる日本――。ですが、本当のところ、「生産性」とは一体何なのでしょうか。
バブル期を延々と繰り返さなければならない?
さて、ここからは「わが国の経済成長率"平均2%"を維持して、35年で2倍、豊かな社会を作る方法」についてシミュレーションをしてみました。
2017年より後は、江端自作の人口シミュレーターを使って、人口の増加率(減少率)を計算しました。私のシミュレーションは、2038年に人口増加率−1.0%を突破することを示しています。さらに2100年までには、100人に1.16人の人口が減少し続け、その後も悪化し続けていきます。
つまり、経済成長率平均2.0%を目指しているところに、既に、人口増加率"−1.0%"というハンディが入ってきますので、"生産性"と"工夫"で、なんとか"3%"程度を引っ張り出してこなければならないことになります。
しかし、これは絶望的に難しいのです。
というのは、1980年以後、人口増加率を差し引いて、3%を超えていたのは、バブル期だけです。(あの日本中が踊り狂った)バブル期を、これからコンスタントに続けていくというのは、――「ジュリアナ東京」のお立ち台で、ボディコンのお姉さんたちのように、毎日、狂ったように踊り続けなければならないかのような絶望感です。
さて、私は今、EE Times Japanでもう1つ枠を頂いて、AI(人工知能)についての連載を執筆しています(「Over the AI ――AIの向こう側に」)が、今回のコラムの執筆で、なぜ政府や企業が狂ったように「AI、AI」と連呼しているのか、ようやく理解できたような気がしています。
それは、私たちは、今や、あの得体のしれない"AI"なるものにすがりつくしか、打つ手がない ―― ということです(もう1つの連載もぜひ読んでください)。
AIは「生産率の向上」と「工夫」ができるのか?
では、このコラムの最後に、AIを含めた経済成長率の可能性について検討をしてみます。
1点目は、「AIは『生産性』を上げてくれるか?」です。
AIは、確かにうまく動かすことができれば、生産性の改善(のアドバイス)をしてくれることはあるでしょう。しかし、それでも設備や人材の投下がなければ、その効果には限界があります。AIと言えども、設備だけ準備されても、その設備を運用する人間がいない限り、何もできません。「ない袖は振れない」のです。
2点目は、「AIは『工夫』をしてくれるか?」です。
AIは、上記の条件をパスすることができるのであれば、効率化などの最適化はできるかもしれません(ですが、それは簡単ではなく、大抵、エンジニアの膨大な時間の多大な労力の投入が必要です)が、工夫(イノベーション)を案出することは「絶対に」できません。
AIがコンピュータプログラムを前提としている以上、プログラムに記載された範囲を超えた動作はできないからです((しつこいですが)詳しくは「Over the AI ――AIの向こう側に()」を絶対ご一読ください)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.