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モノマネする人工知能 〜 自動翻訳を支える影の立役者Over the AI ―― AIの向こう側に(16)(2/10 ページ)

最近の機械翻訳の発展には目を見張るものがあります。なぜ、ここまで進化しているのでしょうか。AI(人工知能)による翻訳、通訳を取り上げ、その発展の理由を探ってみると、その根底には、あるパラダイムシフトが存在していたことが分かりました。

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いつの間にか進化していた翻訳アプリ

 前々回の「開き直る人工知能 〜 「完璧さ」を捨てた故に進歩した稀有な技術」で、私は「Google検索の音声認識技術に度肝を抜かれた」というお話をしましたが、率直に申し上げて、今回も相当ビックリしました ―― 当初予定していた、原稿シナリオ案を、全部ボツにせざるを得なくなったほどです(右図は、マインドマップで作成した、江端シナリオ(ボツ案)のハードコピーです)。

 今も昔も、人類が最もAI技術に期待したアプリケーションは、「異なる言語を持った人間同士の意思疎通」――「翻訳」「通訳」でした。

 私は長いこと研究員をやってきて、これらの「機械翻訳」「自動通訳」などの論文も、そこそこ読んできたのですが、読む度にいつもこんな気持ちになっていました。

 ごたく(数式や理論)はど〜〜でもいいから、とっとと動かせ!!

 で、今回「うん、動いた、見た、納得した」……というか、一体、いつからこんなレベルに至っていたの? ―― という気持ちです。


「い、いつの間にこんなに進化したんだ……!」

 言い訳をさせていただけるのであれば ―― これまでも、バラエティ番組とか通販チャンネルで、この手の翻訳デバイスが紹介されてきましたが、それらの多くは、外国人観光客者向けの、音声案内をする程度の玩具(おもちゃ)だったのです*)

*)実際、これまで、そういうものは何度も製品化されては、すぐに市場から消えていきました。

 しかし、私のスマホが、ラジオニュース「NHK Radio Japan」の、"An international conference on nuclear nonproliferation has opened in Moscow..."と流暢(りゅうちょう)に喋られる英語に対して、『核不拡散に関する国際会議が、モスクワで開催され……』と翻訳文を語り始めた時、さすがの私も「このままではダメだ」と思いました

 私は、常日頃からめったに反省なんてしませんし、加えて、こんなことを言い続けている当事者ですので、ここ数回の本シリーズ「Over the AI」について「無知、調査不足」と非難されても全く言い返せないと、今回ばかりは深く反省しました。

 もしかしたら、"AI技術"の発展を妨害している者は、"AI技術"を技術的に理解していない多くの人々ではなくて、むしろ、"AI技術"で挫折を味わい、その挫折感を払拭できないまま、会社の管理職クラスになった、私のような『第1、第2 AIブーム世代 挫折組』の"シニア技術者"なのかもしれません

 ―― と謙虚な姿勢をお見せしつつ、かつ、江端の本連載の担当能力に関する議論を回避しつつ、加えて、読者の皆さんへの好感度をアップさせつつ、今回も、コラムを始めたいと思います。

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