Qualcomm、サーバ用ARM SoCを発表:Intel Xeonの競合品と位置付け(2/2 ページ)
Qualcommが、サーバ向けARM SoC(System on Chip)「Centriq」シリーズを発表した。「Centriq 2460」については、Intel「Xeon Platinum 8180」の競合品と位置付けている。
Intel「Xeon」の競合品、堂々と言及
Centriqの技術的な詳細の多くは、2017年初めに開催された「Hot Chips」と「Linley Group Processor Conference」で既に発表されていた。その際、クロック速度、価格帯、電力要件については明らかにされなかったが、ここにきて全ての詳細がそろった。
Intelのサーバ向けプロセッサ「Xeon」は、TDP(熱設計電力)が200Wを超える製品が多いが、Centriqの場合、それよりもかなり低い120Wであるという。
Qualcommによると、Centriqの最上位プロセッサは、クロック速度が2.2GHz、ブーストクロックが2.6GHzだという。熱スロットリングが作動するまで、全てのコアで2.6GHzのブーストクロックを維持できる。コアが部分的にアクティブな場合の中間クロック速度はない。
この点は、アクティブコアの数に応じてブーストクロックが変化するIntelのXeonとは対照的だ。CentriqはXeonよりも応答が予測しやすいが、一貫性を維持することと引き換えにピーク性能の向上を断念しているようにも思える。
最上位プロセッサの「Centriq 2460」は、48コアと60Mバイトの統合L3キャッシュを搭載し、バーストクロックは2.6GHz、TDPエンベロープは120Wである。「Centriq 2452」は、46コアと57.5MバイトのL3キャッシュを搭載、バースト速度が2.6GHz、TDPが120Wである。Centriqの最もローエンドのプロセッサは、40コアと50MバイトのL3キャッシュを搭載、バーストクロック速度は最大2.5GHz、TDPは110W弱である。
Qualcommは、Centriq 2460のピークTDPが120Wであることの他にも、CPUのベンチマークである「SPECint 2006」で測定したデータや、65Wの中出力で実施したさまざまなサブテストの平均出力データを提示した。同社は特に、Centriqプロセッサの優れた電力効率をアピールしている。
QualcommはCentriq 2460を、Intelの「Xeon Platinum 8180」プロセッサの競合製品と位置付けている。Xeon Platinum 8180は、28コア、56スレッド、L3キャッシュが38.5Mバイト、ベースクロック速度が2.5GHz、TDPが205Wである。
Qualcommは、「SPECint rate 2006」のGCCコンパイラを使用して、Centriq 2460とXeon Platinum 8180の性能が互角であることを示した。なお、Centriq 2460は、消費電力当たりの性能がXeon Platinum 8180より45%高いが、希望小売価格は5分の1である(Xeon Platinum 8180の1万米ドルに対し、Centriq 2460は2000米ドル)。
Qualcommは近く量産を開始し、同社のシステムパートナーは2018年中にサーバをリリースする予定だという。MicrosoftやAlibabaなど多くのクラウドサーバベンダーは、その間にCentriqベースのサービスを構築すると考えられる。
Qualcommは数年前にCentriqプロセッサに対する投資を開始したが、同社にとっては大きな賭けだった。同社は当時、サーバプロセッサの開発経験がなかったため、モバイル向けSoC「Snapdragon」の開発者を投入して開発チームを結成し、サーバ専用の64ビットARMコアを構築したという。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- “打倒NVIDIA”に向け動き出したIntelとAMD
長年のライバルが、“歴史的な協業”を果たした。Intelのモバイル向け第8世代「Core」プロセッサに、AMDのGPUが内蔵されるのである。“NVIDIA対策”とも取れる今回の協業について、専門家たちの意見を聞いた。 - 中国勢が目指すマイコン市場、その新たなるルート
AppleやSamsung Electronicsなど、大手メーカーの製品に、中国メーカーのシリアルフラッシュメモリやARMマイコンが搭載され始めている。こうした傾向から、中国メーカーが開拓しつつある、マイコン市場への新たなルートが見えてくる――。 - Broadcom、Qualcommを1000億ドルで買収交渉か?
米メディアが、BroadcomがQualcommに買収を持ちかけていると報じた。ただし、複数のアナリストは懐疑的な見方を示している。 - ARMサーバを用いたベアメタルクラウド、日本へ
米国のスタートアップであるPacket Hostが、「ARMv8」アーキテクチャを搭載したサーバを用いたベアメタルクラウドサービスの提供を、2016年12月16日に日本で開始した。専用サイトへの申し込みから10分以内に専用サーバが構築され、80円/時間という低価格で同サービスを利用できる。 - iPhone 8の分解で垣間見た、Appleの執念
2017年9月に発売されたApple「iPhone 8」。iPhone 8の分解から見えたのは、半導体設計に対するAppleの執念だった。 - ベンチャー企業の“典型的な失敗”に学ぶ、成功への要素
今回は、これまで取り上げた北米のベンチャー企業のケーススタディーを振り返りつつ、ベンチャー企業の成功はどんな要素に左右されるのか、ということを考えてみたい。