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量子トンネルFETを酸化物半導体とSi系材料で実現:LSIの低消費電力化に向けて(2/2 ページ)
東京大学大学院工学研究科教授の高木信一氏らは2017年12月4日、極めて小さな電圧制御で動作可能な量子トンネル電界効果トランジスタを開発したと発表した。
実際にSiおよび、Ge上にZnOを堆積させ、トンネルFETを作製
さらに、高木氏らは、高濃度に不純物を添加したSiもしくはGe上に、レーザーアブレーションにより酸化物半導体であるZnO(酸化亜鉛)を堆積することで、トンネルFETを実際に作製した。
【作製したトンネルFETの製造工程】
(a)高濃度の不純物を添加したp型Siもしくはp型Ge基板上に絶縁膜を堆積し、トンネル接合を形成するためのウィンドウを形成。
(b)酸化物半導体(今回は酸化亜鉛)を全面に堆積し、所望の構造にエッチング。
(c)ゲート絶縁膜としてAl2O3を堆積。
(d)TiNゲート電極を形成。
(e)p型Siもしくはp型Ge上にNiソースコンタクトを、ZnO上にAlドレインコンタクトを形成し、最後に各電極上にAlの引き出し電極を形成。
その結果、「既存の半導体作製プロセスにZnO堆積のみを追加することで、所望の構造を実現可能であることを実証した。オン状態とオフ状態の電流比は8桁を上回り、これまでのトンネルFETと比べて約4倍となった」(東大など)とする。
研究チームでは「今後は、より詳細な材料選択とプロセスの最適化により、さらなるオン電流の増大とS係数の低減を目指す」としている。
なお、本研究は科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業の1つとして実施されたもの。2017年12月3日に国際会議「IEDM 2017」で発行された「Technical Digest」に本研究成果が掲載された。
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