ADAS向けライダーシステムを「R-Car」のみで実現:ルネサスが仏メーカーと協業
ルネサス エレクトロニクスは、リアルタイム3次元LiDAR(ライダー)処理を行うソフトウェアを開発するDiboticsと協業。ADAS(先進運転支援システム)向けLiDARシステムを、ルネサスの車載用SoC(System on Chip)のみで実現できるとする。
SLAMのアルゴリズムをSoCで動かす
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)と、リアルタイム3次元LiDAR処理技術を手掛けるフランスDibotics(ディボティクス)は2017年12月14日、ADAS(先進運転支援システム)向けLiDAR(ライダー)ソリューションで協業したと発表した。
同LiDARソリューションは、ルネサスの車載用SoC(System on Chip)「R-Car」およびDiboticsの各種LiDARセンサーに対応可能なSoC向けソフトウェア「SLAM on Chip(Simultaneous Localization and Mapping on Chip)」を組み合わせることで実現する。なお、SLAM(スラム)とは、自己位置推定と環境地図作成を同時に行うアルゴリズムである。
今回の協業では、DiboticsのSLAM on Chipである「Dibotics’ Augmented LiDAR software」をR-Car向けにカスタマイズして実装し、動作させることに成功。Diboticsは2018年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催される「CES 2018」で、このデモを展示する予定だ。
3次元(3D)のSLAM処理を行うには高性能なPCが必要だったが、これをSoC上で実現できるようになる。加えて、従来必要だったIMU(慣性計測ユニット)とGPS(全地球測位システム)データを使用せず、LiDARで取得するデータのみで3Dマッピングシステムを作成できる。SLAMを実装するSoCにR-Carを使用することで、車載システムで活用できる低消費電力かつ機能安全にも対応したリアルタイムの3Dマッピングシステム(=車載用LiDARシステム)を開発できるとする。
Diboticsは2015年に設立された企業で、ロボット向けのLiDAR処理技術を基に、3D SLAM技術を開発した。
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