ルネサス 100MBのフラッシュマイコン実現にメド:16/14nm世代MCU 2023年に実用化へ
ルネサス エレクトロニクスは2017年12月6日、16nm/14nmプロセス世代以降のフラッシュメモリ内蔵マイコンの実現に向けて、フィン構造の混載フラッシュメモリの大規模動作に成功したと発表した。これにより、次世代マイコンにおいて、100Mバイト超の大容量フラッシュメモリの内蔵化に向けたメドを得ることができたという。
16/14nmマイコン用フラッシュの大規模動作成功
ルネサス エレクトロニクスは2017年12月6日、16nm/14nmプロセス世代以降のフラッシュメモリ内蔵マイコンの実現に向けて、フィン構造の混載フラッシュメモリの大規模動作に成功したと発表した。2023年頃に、16nm/14nmプロセス世代のフラッシュ内蔵マイコンの実用化を目指す方針。
同社は2016年12月に、16nm/14nmプロセス世代以降のマイコンへの搭載に向けて、フィン構造の立体トランジスタを採用したSG-MONOS*)フラッシュメモリの単体メモリセルの動作確認に成功しており、今回の発表は、複数メモリセルによるメモリアレイでの大規模動作を実証したもの。これにより、「次世代混載フラッシュメモリの100Mバイト超の大容量化に対し、メドを得ることができた」(ルネサス)とする。
*)MONOSは、「Metal(メタル)−Oxide(酸化膜)−Nitride(窒化膜)−Oxide(酸化膜)−Silicon(シリコン)」の略称。シリコンの上に、酸化膜、窒化膜、酸化膜の3層構造があり、その上に制御ゲート(メタル)が載った、記憶用トランジスタ(メモリセル)の構造のこと。ルネサスは、ゲート電極を2つに分けた「スプリットゲート(SG)」構造のMONOS技術「SG-MONOS」を開発し、高信頼性、高速動作、低消費電力を実現するSG-MONOS型フラッシュメモリとして、マイコンに内蔵している。
SG-MONOSフラッシュメモリは、メモリ保持をシリコン基板面に形成した薄いトラップ膜で行うため、3次元立体構造であるフィン構造への展開が比較的容易であり、同じくフィン構造を用いる16nm/14nm世代のロジックプロセスとの親和性が高い。また、電荷トラップ型MONOSフラッシュメモリの特長である優れた電荷保持特性は、フィン構造でも損なわれず、従来と同等の信頼性を維持することが確認されている。
今回、大規模メモリ動作の実証に際し、ルネサスはフィン構造向けに成膜条件、加工条件、イオン注入条件などのプロセス条件の最適化を図り、従来のプレーナ構造と比較してプロセスステップ数を増加させることなく、メモリアレイの試作を実現。フィン構造で期待される短チャネル効果抑制、ばらつき低減の効果を、「アレイレベルでも安定して得ることができた」という。
合わせて、フィン構造メモリアレイ向けに書き込み方式も改良。単体メモリセル動作実証時に、適用した書き込み電圧を低い電圧から段階的に上昇させるステップパルス書き込み方式(ISSP:Incremental Step Pulse Programing)を最適化し、高速書き込みと信頼性の両立を図った。その結果、従来のプレーナ構造よりも高速な書き込み、消去を実現すると共に、データ保存用フラッシュメモリで従来通りの25万回の書き換えを行った後も、書き込み速度、消去速度にほとんど影響がない結果を得たとしている。
車載用途可能なデータ保持特性
データ保持特性についても、書き換え動作後に160℃で10年以上の保持時間を維持、従来と同等であることを確認。高温下での高いデータ保持特性が求められる車載用途への応用についてもメドを付けたことになる。
ルネサスは、SG-MONOS構造フラッシュメモリ技術を適用した40nm世代マイコンを量産中で、現在28nm世代マイコンの開発を実施している。開発した技術は、16nm/14nm世代マイコンは、28nm世代マイコンの後継世代となり「2023年ごろの実用化に向けて開発する計画」(ルネサス)としている。
なお、今回の開発成果は2017年12月4〜6日に米国で開催されている国際学会「IEDM 2017」で発表された。
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