「iPhone X」の密かな勝者たち(後編)〜進化を遂げた光学システム:光学システムが一番の技術的進歩(1/2 ページ)
「iPhone X」を分解し、ロジックIC以外のデザインウィンに焦点を当てる。フランスの調査会社Yole Developpementが、今回のiPhoneで「一番の技術的進歩」と指摘するのが光学システムだ。
一番の進化は光学システム
Yole DéveloppementのCEO兼プレジデントであるJean-Christophe Eloy氏が、Appleの「iPhone X」で一番の技術的進歩と考えているのは、何といっても光学システムだ。iPhone Xの顔認証機能を支える「TrueDepth」カメラは、5つのサブモジュールを組み合わせたものである。
サブモジュールは具体的には、STMicroelectronics(以下、ST)が提供する近赤外カメラ、STのToF(Time of Flight)方式近接検出器+IRフラッドイルミネーター、RGBカメラ、オーストリアのamsが提供するドットパターンイルミネーター、amsが開発した色/環境光センサーである。Fraux氏は、「RGBカメラセンサーは、複雑なサプライチェーンの製品だ。CMOSイメージセンサーはソニー製で、モジュールはLG Innotekが提供していると思われる」と述べている。
iPhone Xは、前面に3Dカメラが搭載されていて、所有者の顔を識別して電話のロックを解除できるが、Yole Développementでイメージングおよびセンサー担当アクティビティーリーダーを務めるPierre Cambou氏は、EE Timesに対して「Appleは、ToF方式の近接検出器と、フラッドもしくはドットパターンの均一照射を使用した赤外線立体照明カメラを組み合わせてこの機能を実現している」と説明している。
同氏によると、3Dシステムの仕組みは、写真撮影を行う通常のCMOSイメージセンサーとは大きく異なるという。iPhone Xは、赤外線カメラと、均一な赤外光を照射するフラッドイルミネータを組み合わせて、画像を撮影した後に、顔検出アルゴリズムを作動する。
ただし、この顔認識機能は常に動作しているわけではない。ToF近接センサーに接続された赤外線カメラは、顔を検出すると、カメラに対して写真を撮るように指示を出す。すると、iPhone Xはドットパターンプロジェクターをアクティブにして画像を撮影し、通常画像とドットパターン画像の両方をAPU(Application Processing Unit)に送信し、ニューラルネットワークを介して所有者を認識、スマートフォンのロック解除を行うという仕組みだ。
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