スマートカメラ用SoC、自動運転レベル4を視野に:高度なAI処理を低電力で実行
ルネサス エレクトロニクスは、レベル4対応自動運転システムに向けた車載用スマートカメラ向けSoC「R-Car V3H」を発表した。高度なコンピュータビジョン処理を極めて小さい消費電力で実現する。
共通プラットフォームで開発期間やコストを節減
ルネサス エレクトロニクスは2018年2月、車載用スマートカメラ向けSoC「R-Car V3H」を発表した。レベル4対応自動運転システムに向けた製品で、高度なコンピュータビジョン処理を極めて小さい消費電力で実現することができる。
R-Car V3Hは、車載スマートカメラ向けSoCの第二弾となる製品。2017年4月に発表したNCAP(New Car Assessment Program)用スマートカメラ向けSoC「R-Car V3M」の上位製品と位置付ける。これにより、共通したプラットフォームで車載用スマートカメラを開発することができ、開発の期間短縮やコスト削減が可能となる。
R-Car V3Hは、AI(人工知能)処理を行うための専用CNN(Convolution Neural Network)エンジンを搭載した。この他にも、ステレオカメラで距離を計測する「ステレオディスパリティ」、低速や高速で動く物体を正確にフロー追従する「高密度オプティカルフロー」、ある領域内の物体を高速に検出するための「オブジェクト分類」などを行う専用エンジンを搭載している。
さらに、独自の画像認識エンジン「IMP-X5」を進化させた「IMP-X5-V3H」を搭載しており、専用エンジンと組み合わせることで、高度なコンピュータビジョン処理が可能となる。しかも、低消費電力技術を用いることにより、R-Car V3HはAI処理をわずか0.3Wという、極めて小さい電力消費で実行することができるという。
また、画像センサーの信号を処理するエンジン(ISP:Image Signal Processor)も搭載した。画像の絵作りや認識処理を行うことができるため、簡易な車載カメラと組み合わせて利用することも可能である。
R-Car V3Hは、2018年9月よりサンプル出荷を始める。量産開始は2019年後半を予定している。
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