測定距離を2倍に、東芝がLiDAR向け回路技術:高度な自動運転システムを可能に
東芝は、車載用LiDAR(ライダー)向けの回路技術を開発した。従来技術に比べて測定可能な距離を2倍とし、高い解像度も実現した。より安全で高度な自動運転システムが可能となる。
独自のハイブリッド回路で短距離は高精度に測定
東芝は2018年3月、車載用LiDAR(ライダー)向けの回路技術を開発したと発表した。従来技術に比べて測定可能な距離を2倍に伸ばし、高い解像度も実現した。この技術を応用すると、より安全で高度な自動運転システムが可能となる。
LiDARは、レーザーを照射しその反射光を検知することにより、離れた場所にある物体までの距離などを測定し、車両周辺の状況を3次元画像として瞬時に把握することができるシステムである。
東芝は今回、より高度な自動運転システムの実現に向けて、200mまでの距離を高精度に測定することができる独自のハイブリッド回路と、小さい物体も検知できる高解像測距技術を開発した。
具体的には、長距離測定用のA-D変換回路と短距離測定用のT-D(Time-Digital)変換回路の2つに分け、1チップに集積したハイブリッド構成とした。これによって、長い距離を測定する時には、A-D変換回路で太陽光などの雑音を低減する平均化処理を行う。一方、駐車アシスト機能などを利用する場合は高精度に距離を測定する必要があるため、T-D変換回路で高速に処理を行うことにした。
また、これまでの平均化処理で課題となっていた解像度の劣化も解決した。開発した高解像測距技術は、各レーザーが照射して得られた反射光が、同一物体からのものかどうかを判断する。その上で、同一物体のみのデータを選択して平均化処理を行う。これによって、小さな障害物まで検知することができ、歩行者などの見落としも低減できるという。
東芝は引き続き、測定距離の延伸と精度の向上に向けた研究開発を行い、2020年度までに実用化技術を確立する計画である。なお、今回の研究成果は、米国サンフランシスコで開催された半導体集積回路の国際会議「ISSCC 2018」(2018年2月11〜15日)で発表した。
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