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GaN-MOSFET向けゲート絶縁膜プロセス、東芝が開発:しきい値電圧変動を大幅に低減
東芝は、GaNパワーデバイス向けにゲート絶縁膜プロセス技術を開発したと発表した。「IEDM 2017」で発表したもの。しきい値電圧の変動を極限まで低減するという。
ゲート絶縁膜中の不純物を大幅に低減
東芝は2017年12月7日、GaN(窒化ガリウム)パワーデバイス向けにゲート絶縁膜プロセス技術を開発したと発表した。しきい値電圧変動などの特性変動を大幅に低減するもので、同技術を適用したGaN-MOSFETにより、GaNパワーデバイスの信頼性が向上すると東芝は主張する。東芝は同プロセス技術の詳細を、米国サンフランシスコで開催された国際学会「IEDM 2017」(2017年12月2〜6日)で発表した。
東芝は、GaN-MOSFETのしきい値電圧変動を引き起こす原因が、ゲート絶縁膜中の不純物トラップにあることを突き止めたという。今回開発したプロセス技術は、この不純物を極限まで低減するものだ。GaN半導体加工時のダメージを回復する処理を施した上で、形成したゲート絶縁膜に適切な熱処理を加える。これにより、ゲート絶縁膜に含まれる水素などの不純物を低減できるという。
従来技術に比べ、しきい値電圧の変動が大幅に低減し、ゲート信頼性が向上するとしている。
Siパワーデバイスに比べ、小型化、高耐圧、高速スイッチングを実現できるGaNパワーデバイスだが、GaN-MOSFETは従来の技術で製造するとしきい値電圧の変動が課題となり、実用化がなかなか進まずにいた。
今後東芝は、今回発表した技術の実用化に向け、信頼性をさらに向上すべく開発を続けるとする。
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