中国、半導体産業に新たに3兆円を投資:さらなる脅威となるのか?(2/2 ページ)
中国が、半導体産業に新たに2000億人民元(約3.3兆円)の資金を投じるという。専門家の中には、「中国が技術の後れを取り戻すには、相当の投資が必要になるだろう」との声もある。
メモリに注力する中国
中国は、メモリチップ製造分野における基盤の構築を目指し、新しい資金計画を進めているところだ。同分野は数十年前、日本や韓国、台湾の新興半導体メーカーにとって、市場への入り口となっていた。
しかし今回の場合、参入の障壁を乗り越えるのは非常に困難なことになるだろう。
McClean氏は、「YMTCなどの中国メモリメーカーは、製造を開始する時点で、Samsung ElectronicsやMicron Technology(以下、Micron)などの業界トップに対して、少なくとも2世代の後れを取っていることになる。さらに、潜在的な特許侵害といった法的なハードルに直面する可能性もある」と述べる。
中国は、国内の消費量が膨大であることや、市場シェアの大半を中国機器メーカーが確保していることなどから、中国製メモリを使用する中国国内メーカーに対して、インセンティブを提供する可能性がある。あるアナリストのレポートによると、中国は近い将来、世界のDRAM供給量全体の約5%、NAND型フラッシュメモリ供給量全体の約4%に相当する売上高を達成できる見込みだという。ただし、知的財産権の侵害や最先端技術に関しては考慮しないものとする。
中国はこれまで、ある程度の成功を見込み、旧エルピーダをはじめとする多くの製造メーカーが破綻に陥った日本や台湾から、坂本幸雄氏のようなメモリチップ分野のベテランを引き抜いてきた。旧Micronの子会社である台湾Inotera Memoriesの幹部を務めた経歴を持つCharles Kao氏は、中国語でのインタビューの中で、「現在メモリ市場で優勢を確立しているSamsungやSK Hynixに対抗するための取り組みの一環として、YMTCのCOO(最高執行責任者)として迎え入れられた」と述べている。
また同氏は、「YMTCは、同社にとって初となる64層積層プロセスを用いた3次元構造のNAND型フラッシュメモリ(3D NANDフラッシュ)の製造を、間もなく開始する予定だ」と明かしたが、具体的な時期については触れなかった。同氏によると、YMTCは2017年末までに、32層積層プロセスの3D NANDフラッシュのサンプル出荷を開始する予定だったという。
Kao氏によると、米ワシントンD.C.では現在も、政治的敵対勢力が強いが、YMTCにとっては、世界第3位のメモリメーカーであるMicronと協業するチャンスがあるという。中国は数年前に、Micronの買収を試みたが、最終的に米国政府によって阻止されている。
中国半導体メーカーTsinghua Unigroupの共同プレジデント兼ストレージアーム担当チーフエグゼクティブを務めるQi Lian氏は2018年3月1日、報道関係者に対し、「われわれは、独自に開発した技術を提供し、中国製品の市場シェアを拡大していくことにより、世界的な巨大メーカーに対してバランスを取る役割を担いたいと考えている。この目標を達成すべく、独自の研究開発施設を設立し、世界的な技術協力関係に注目しているところだ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 中国のメモリ戦略は苦難の道をたどるのか
半導体技術の強化を図る中国が、メモリ産業に狙いを定めている。だがメモリは、技術開発にも製造にも膨大な資金がかかる分野だ。中国は、メモリ関連の知識と経験を持つ人材の確保に奔走しているが、「中国は苦しい選択をした」との見方を示す専門家もいる。 - 半導体市場における中国の脅威、米政府が報告
半導体産業における中国の脅威について、米政府が報告書をまとめた。中国政府の半導体強化政策を批判しているわけではなく、中国企業による米国半導体企業の買収が、米国の安全を脅かすものになり得る場合もあると指摘し、中国メーカーが市場をゆがめるようなM&A政策を採った場合は、これを阻止するよう提言している。 - 中国メモリメーカーが直面する“特許”の壁
メモリに注力する中国だが、Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyという巨大な3社が持つ特許を侵害せずに、メモリ技術開発を行うことはほぼ不可能だといわれている。中国メモリメーカーが直面するのは、“特許”の壁だろう。 - 車載用マイコンへの要求仕様
車載用マイコンに対する要求仕様は、かなり厳しい。車載用マイコンが内蔵する不揮発性メモリについても同様だ。今回は、これらの要求仕様について説明する。 - 半導体メモリの専門学会「国際メモリワークショップ(IMW)」が日本で開催へ
2008〜2017年まで主に米国で開催されてきた「国際メモリワークショップ(IMW)」が、2018年は日本の京都で開催される。今回はIMWの概要を紹介しよう。 - 日本企業にとって「中国は脅威ではなくチャンス」
SEMI Chinaのプレジデントを務めるLung Chu氏は、2017年12月13〜15日に開催された「SEMICON Japan 2017」の基調講演で、中国の半導体市場について講演。中国は、まだ「脅威」ではなく、むしろ大きなビジネスチャンスだと強調した。