有機的成長を図るST、2018年日本市場で2桁成長へ:次期社長兼CEOらが戦略説明
STMicroelectronics(以下、ST)は2018年3月、同社社長兼最高経営責任者(CEO)のCarlo Bozotti氏と、次期社長兼CEO(2018年第2四半期就任予定)のJean-Marc Chery氏が出席し、都内で会見を開催し、成長戦略などを説明した。
「STの歴史上、最高の成長を果たすことができた」
STMicroelectronics(以下、ST)は、2017年に前年比30%増を上回る増収を達成した日本市場において、2018年も売上高2桁成長を図る方針。2018年3月、同社社長兼最高経営責任者(CEO)のCarlo Bozotti氏と、次期社長兼CEOに内定しているJean-Marc Chery氏(=現・最高業務責任者[COO]兼副CEO)が都内で開催した記者会見で明らかにした。
STは2017年度(2017年12月期)、売上高83億4700万米ドルで前年比19.7%増という大幅増収を達成。Bozotti氏は「自動車、産業、パーソナルデバイスなどの成長分野で、6つの製品分野(=「車載半導体」「汎用MCU・メモリ」「アナログ・パワーIC」「ディスクリート」「ASIC」「MEMS・アクチュエーター」)の全てで成長を実現した。地域別でも、全地域で業績が伸びた」と事業や市場を問わず全般的に業績が好調だったと強調した。
「STの歴史上、最高の成長を果たすことができた」(Bozotti氏)と評価する2017年において、とりわけ高い成長を記録したのが日本市場。任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」向けのモーションセンサー、タッチコントローラIC、マイコンなどが好調だった他、車載向けマイコンなど「あらゆる領域で市場平均を超えた」(Bozotti氏)とし、前年比33%増の増収を記録した。2018年第2四半期に社長兼CEOに就任する予定のChery氏は「日本は重要な市場。革新レベルの高い顧客がおり、スマート工場などの領域でもイノベーションを起こしている。今後も日本市場へのフォーカスを継続していく。2018年は、2桁成長を実現する」とした。
2018年も好調なスタート
ST全社としても2018年は前年比増収を目指す方針で、2018年第1四半期売上高については「前年同期比で22%成長が見えている」(Bozotti氏)と2017年の好調さを維持していることを明らかにした。
2018年以降の成長戦略については、「スマートインダストリー」「スマートホーム/スマートシティ」「スマートシングス」「スマートドライビング」という4つの成長領域に対し、6分野で構成する製品群を展開するというこれまでの成長戦略を踏襲していく方針。その中で、特に注力していく技術領域として「MEMS」「BCDプロセスを応用したスマートパワー」「FD-SOI(完全欠乏型シリコンオンインシュレーター)」「SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)応用パワー半導体」「特殊イメージセンサー」などを挙げる。
FD-SOIでは、Mobileyeの車載画像認識用SoC「EyeQ4」などに採用される28nm世代FD-SOI技術を用いたマイコン製品を開発中。28nm FD-SOI採用マイコンでは、内蔵不揮発メモリとして、「消費電力を低減でき、製造プロセスとの親和性も良い」(Chery氏)という相変化メモリを採用するという。また、マイコンでは、STの主力マイコン製品群「STM32」の全製品でAI(人工知能)関連処理を行えるよう、開発ツールの整備やニューラルネットワークエンジンの搭載を進めていくとした。
Chery氏は「STは(大きな投資が必要な)メモリ事業やハイエンドのマイクロプロセッサ事業を手掛けていない。そうした中で、研究開発と設備投資にそれぞれ年間13億米ドル投じており、自社で能力を十分に高められる規模がある。この規模であれば競合他社と競争していくことができる。時には他社のIPや人材が必要な場合もあり、最近もIPやツールなどを買収しているが、STは有機的な成長を目指していく」とし、M&Aを通じた事業規模の拡大に対しては否定的な考えを示し、自力成長を目指していく姿勢を打ち出した。
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