“アナログ技術大国”へと変貌する中国:製品分解で探るアジアのトレンド(26)(3/3 ページ)
中国の最新製品には、「欧米製チップ+中国製チップ」の組み合わせが非常に多くなっている。こうした新製品を分解して痛切に感じるのは、中国半導体メーカーが、“アナログ技術大国”になりつつある、ということだ。
欧米+中国のチップ構成
図3は、Car Multimedia Playerのマザーボードとディスプレイのタッチコントローラーの様子である。マザーボードは外部とのインタフェースとオーディオ処理関連のチップで構成されている。STMicroelectronicsやNXP Semiconductorsのチップも使われているが、半数は中国チップを採用している。今や「欧米+中国」のチップを組み合わせるシステムが、中国製品には最も多い。日本製チップとの組み合わせは少ないのが実情だ。
タッチコントローラーは、スマートフォンで数多く採用されている中国Goodixの製品だ。スマートフォンと同様にマルチタッチ機能を実現できる。カー用品も、単タッチからマルチタッチに切り替わり、スマートフォンとカー製品のディスプレイがミラーリングで同じだけでなく、操作そのものも同じようになっている。
レーダー内蔵の人感LED、内部は全て中国チップ
今回はさらにもう一製品を報告しよう。レーダー内蔵の人感LEDである。中国Luxonの製品だ。日本でもネット通販などで取り扱われる製品である。夜間などに人を感知すると点灯し、時間が経つと電源がオフになるという商品だ。
レーダーをセンサーとして使うことで、従来製品に使われている赤外線センサーに比べて反応速度が速く、精度が高いという。廊下や地下室、車庫、倉庫などに適しているともいわれている(ただし、感度が良すぎるのでリビングなどには適さないというユーザーの声もある)。
内部は、センサー部以外は全て中国製の半導体で構成されている。図4に本製品の梱包箱、内部の一部を掲載する。
弊社では中国半導体をメインに扱っているわけではない。多くの新しいアイデアの製品や話題の製品を率先して入手している。AppleやGoogleの製品から車載関連製品、日本製品、韓国製品まで、多くの機器を分解、解析している。
ただ、その中で、新しいものは中国発が多く、結果として多くの中国製品を扱うことになってしまう。そしてApple製品や日本製品にも、中国のチップは確実に入り始めているのだ。
この状況はさらに広がることは間違いない。継続して観察することが、今最も重要だと弊社は真剣に考えている。
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