LoRaWAN導入は“手軽さ”が鍵、商社がパッケージを提供:今後は国内でも導入が進む
「第1回 次世代モバイル通信展」では、LoRaWANをより手軽に導入できるよう、端末からサーバまでをパッケージとして提供する技術商社の展示が目立った。
「第1回 次世代モバイル通信展」(2018年4月4〜6日、東京ビッグサイト)で、常に人だかりのあったところが、LPWA(Low Power Wide Area)ゾーンだ。とりわけ、京セラコミュニケーションシステム(Sigfoxのネットワークパートナー)と、LoRa Allianceのブースは混雑していた。
LoRa Allianceのブースで目を引いたのが、技術商社の存在だ。菱洋エレクトロとマクニカネットワークスはそれぞれ、LoRaWANの導入に必要なハードウェアなどをパッケージとして提供する製品を展示した。
マクニカネットワークスが間もなく提供を開始するLoRaWANパッケージは、センサーなどのエンド端末、ゲートウェイ、ネットワークサーバ、アプリケーションの4つで構成されている。エンド端末には、Braveridgeなどが提供する温湿度センサー、加速度センサーなどがある。ゲートウェイはKerlink製で、ネットワークサーバはActilityが提供、アプリケーションサーバはmyDevicesなどが提供する。
マクニカネットワークスは、オフィスやビルでニーズの高い、空間環境のモニタリング、トイレの使用状況のモニタリング、駐車場の満空のモニタリングという3つの用途に絞って、LoRaWANパッケージを構成し、2018年5月から順次提供を開始する予定だ。価格については要問い合わせだという。
マクニカネットワークスは、横浜市にある同社のオフィスで、トイレの使用状況のモニタリングや駐車場のモニタリングを実験的にLoRaWANで行っていて、「社内では評判がいい」(説明担当者)という。「これまでは、駐車場の空き具合をわざわざ直接見に行っていた。それがなくなるだけで、負担がずいぶんと少なくなったと聞いている」(同社)
同社の説明担当者は、「LoRaWANについては、“こういった用途で使えないか”という具体的な問い合わせが増えている。LoRaWANをより導入しやすくできるよう、当社のエコシステムパートナー各社と協力して、LPWAパッケージの提供を進めていきたい」と述べた。
LoRaWANの導入事例、国内では2019年から増える?
菱洋エレクトロもモジュールおよび、センサー、ゲートウェイ、ネットワークサーバ、アプリケーションサーバのそれぞれについて豊富なパートナーを生かし、顧客のニーズに合わせて最適化したLoRaWANパッケージを提供することを目指している。「顧客の要望に合わせて、パートナー各社とともに仕様からカスタマイズして設計、製造、製品化することもできる」と、菱洋エレクトロの担当者は述べる。
菱洋エレクトロのパートナーは、モジュールやセンサーではBraveridge、村田製作所、InsightSiPなど、ゲートウェイではGemtekやLaird、ネットワークサーバはTrackNet、アプリケーションサーバではMicrosoftやIBM、ウフルなどである。
現時点では、日本国内ではSIGFOXの実証事例や導入事例が多い印象だが、菱洋エレクトロの担当者は、「LoRaWANについては、モジュールメーカーなども開発を精力的に進めていて、ネットワーク構築に必要な要素がそろってきている。日本国内もこれから導入が進んでいくのではないか。2019年以降は、導入事例が増え始めるとみている」と述べた。
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