理研と東レ、衣服に貼り付けられる有機太陽電池を開発:アイロンを掛けても劣化しない(2/2 ページ)
理化学研究所(理研)と東レは2018年4月17日、高い耐熱性と変換効率を兼ね備えた超薄型有機太陽電池の開発に成功したと発表した。e-テキスタイルへの応用や、車載やウェアラブル機器の電源として活用が期待できるという。
最大変換効率10%を達成し、疑似太陽光照射で最大36mWの発電
この超薄型有機太陽電池は、ガラス支持基板から剥離した状態でも高い性能を示している。出力100mW/cm2の疑似太陽光を照射した場合における複数素子の平均値は、短絡電流密度(JSC)が17.2mA/cm2、解放電圧(VOC)が0.79V、フィルファクターが69%、エネルギー変換効率は以前の研究から1.3倍向上し9.4%を達成した。変換効率の最大値は10%に到達している。
また、同電池素子を5cm角基板に110個形成した大面積モジュールでは、疑似太陽光下で最大36mWを発電できるという。
大気安定性の面では、2000時間(約80日)大気中に保管した後であっても変換効率の低下を20%に抑えた。理研によると、従来材料の電池では700時間後の変換効率が約50%低下するため、同電池では非常に優れた大気安定性を有しているとする。
同電池のこれら特性を活用し、衣服作製時に布地接着などで用いられているホットメルト手法によって、電池を布地へ貼り付ける試験を実施した。ホットメルト手法は、熱で溶融する接着剤を利用した接着プロセスであり、試験では120℃、15kPaの条件で30秒間加熱圧着させている。この試験においても同電池の特性変化や劣化はほとんど見られなかったという。
理研などによれば、同技術によってe-テキスタイルに向けた衣服貼り付け型太陽電池や、車内などの高温多湿環境下でも駆動する軽量電源への活用が期待できるとしている。
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