2018年にもサービス開始、5G開発を加速するAT&T:LTEとの動的な共有も想定(2/2 ページ)
5G(第5世代移動通信)の導入は2018年後半から段階的に進むとみられているが、そのためには多面的で準備を整える必要があるようだ。AT&Tのラボチームを率いるマネジャーが、米国テキサス州オースティンで、5G実現に向けた挑戦について語った。
LTEと5Gを動的に共有
こうした状況の中、AT&Tや他の通信事業者は、3GPPで最重要課題となっている「LTEと5Gで、周波数帯を動的に共有する」技術に対する準備を進めている。Wolter氏は、「需要に応じて、LTEのサービスを停止せずに、最初の5Gユーザーにサービスを提供する方法を想定している。これによって、容易に移行を進めることができる」と述べている。
AT&Tなどの通信事業者は、標準規格と規制が整理されるのを待ってから、新しい周波数帯のライセンスを取得するべきか、古い周波数帯の再割り当てを受けるべきかを判断する方針のようだ。Wolter氏のグループは、これらの決定が下されるまで、サブ6GHz帯のテストベッドの設置を待つという。
他の5Gの用途についても、準備が進められている。AT&Tの競合であるVerizonは、2018年中に5Gを使用した固定無線インターネットアクセスを提供する計画を発表した。米国のケーブルテレビ大手Comcastなども、同様の計画を進めているという。AT&Tは、3都市で固定無線サービスのパイロット運用を実施しているが、商用サービスの開始時期については明らかにしていない。
Wolter氏は、「Verizonは2018年に、先行規格に対応した機器で固定無線サービスを提供するとしている。当社は、先行規格に対応した機器でパイロット運用を実施するが、サービスの展開は標準規格に対応した機器で実施することを決定した」と述べている。
AT&Tはこれとは別に、Release 16の策定作業をサポートしている。Release 16は、基地局に光ファイバーを導入することが難しいエリアにおいて、バックホールとして5Gを使用するための規格である。Wolter氏は、「当社は、できるだけ早い5Gの実装に向けて、ベンダーと協力してきた。ただし、AT&Tのネットワークがどれくらい広く利用されるかはまだ分からない」と述べている。
Wolter氏は、「通信事業者は、5Gによって新しい市場が開拓されることを大いに期待している。それには標準規格の策定と実装に関する課題の解決が必要で、現在、実現に向けて全力で取り組んでいる」と語った。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 5G向け特許、シャープがいち早く利用許諾を宣言
2017年12月に、「5G(第5世代移動通信) NR(New Radio)」の標準仕様の初版が策定された。シャープはこれを受け、5G NRに適合する同社の特許ファミリー495件を選定し、FRAND条件(公正、合理的かつ平等な条件)で利用を許諾することを表明している。 - 「有線技術なくして5Gは実現できない」 ノキア
5G(第5世代移動通信)の開発に取り組むNokia(ノキア)。ミリ波やMassive MIMOなど無線ネットワーク技術が重視されがちだが、ノキアは、固定ネットワーク技術の進化なくして5Gの実現はないと強調する。 - AI+5G+IoTの融合、具体的に見え始めたCES 2018
情報通信総合研究所は2018年1月31日、東京都内で「CES 2018」を振り返る勉強会を報道機関向けに行った。今回のCESは、5G(第5世代移動通信)、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)が融合したサービスが、より具現化されて見え始めた展示会だったという。 - 5Gの出発点、知っておきたい「フェーズ1」の基本
5G(第5世代移動通信)は実用化のスケジュールが非常にタイトなため、規格策定の計画が段階的に組まれている。まずは2017年12月に、フェーズ1の策定が完了する予定だ。これを機に、フェーズ1で取り扱われる「5G NSA(Non Stand Alone)」やミリ波について、知っておきたい基本事項を整理してみよう。 - 5G、IoTで変わる半導体・デバイス
IoT(モノのインターネット)社会の本格拡大に不可欠な第5世代移動通信(5G)技術。現在、規格策定が進められている状況だが、5Gとは一体どのようなものなのか、そして5Gの登場は半導体やデバイスにどういった影響を与えるのだろうか。 - ソフトバンクがNB-IoTの商用サービスを開始、月額10円から
ソフトバンクは2018年4月26日、IoT(モノのインターネット)向けLTE規格であるNB-IoTおよびCat. M1(カテゴリーM1)のネットワーク構築を完了し、商用サービスを開始したと発表した。