記憶容量と書き換え回数から最適な埋め込みメモリを選択:福田昭のストレージ通信(101) GFが語る埋め込みメモリと埋め込みMRAM(1)(2/2 ページ)
半導体デバイス技術に関する国際会議「IEDM」で行われたセミナー「Embedded MRAM Technology for IoT & Automotive(IoTと自動車に向けた埋め込みMRAM技術)」の概要を今回からシリーズで紹介する。
記憶容量と書き換え可能回数の違いで埋め込み不揮発性メモリを分類
埋め込みメモリを不揮発性メモリ(eNVM)に限ると、記憶容量と書き換え可能回数によって分類できる。記憶容量では、128バイトから1Kバイトの極小容量品、1Kバイト超から128Kバイトの小容量品、128Kバイト超から1Mバイトの中容量品、2Mバイト以上の大容量品に分かれる。
書き換え可能回数では、10回未満、100回未満、1万回未満、20万回未満、50万回未満、100万回以上と大きな違いがある。
CMOSロジックとの製造技術の互換性にも注目すべきだろう。最も望ましいメモリは、追加の製造用マスクがゼロであることだ。しかしそのような埋め込み不揮発性メモリは少ない。大きな記憶容量と多くの書き換え回数を両立させたメモリでは、追加の製造用マスクが10枚以上に達することもある。
最も書き換え回数が少ないのはOTPメモリとヒューズだろう。いずれも原則として1回だけ、データを書き込める。記憶容量ではOTPメモリが小容量品、ヒューズが極小容量品に属する。これらのメモリはCMOSロジックと完全互換のプロセスで製造できる。追加の製造用マスクは必要ない。
次いで書き換え可能回数が100回未満のMTPメモリがある。記憶容量では小容量品である。追加の製造マスクは3枚前後で、非常に少ない。
プログラムのコードを格納するメモリの代表は、フラッシュメモリだろう。低コスト版の埋め込みフラッシュメモリには電荷捕獲型(SONOSタイプ)とスプリットゲートの浮遊ゲート型(SG-Flashタイプ)がある。
SONOSタイプは記憶容量が128Kバイトから1Mバイトの中容量品であり、書き換え可能回数は1000〜1万回となっている。追加する製造マスクは3〜9枚に増える。
SG-Flashタイプは記憶容量が1M〜2Mバイトに増え、書き換え可能回数は1万〜2万回と寿命が伸びる。ただし追加する製造マスクは8〜10枚とさらに増える。
ハイエンド版の埋め込みフラッシュメモリは、SG-Flashタイプで記憶容量が2Mバイトを超える。書き換え可能回数は10万〜20万回に達する。ただし、追加する製造マスクは13枚とかなり多い。
MRAMは、これらの埋め込み不揮発性メモリの頂点に立つ可能性がある。記憶容量は4Mバイト以上、書き換え可能回数は100万回を実現可能だ。そして製造マスクの追加は、わずか4枚で済む。
(次回に続く)
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