私を「疾病者」にしたのは誰だ? 労働と病(やまい)の切っても切れない関係:世界を「数字」で回してみよう(49) 働き方改革(8)(2/10 ページ)
現代の社会において、労働と病(心身の)の関係は切っても切り離せません。会社組織には、「労働者」を「疾病を抱える労働者」へと変貌させる機能が備わっているのかと思うほどです。今回は、「労働者の疾病」に焦点を当ててシミュレーションを行ってみました。
3人に1人は、治療をしながら働いている
こんにちは。江端智一です。
今回は、政府が主導する「働き方改革」の項目の1つである、「病気と労働」について考えていきたいと思います。
政府が、「働き方改革実行計画」の「病気と労働」で掲げている(私が乱暴に理解した)課題と、私の所感は以下の通りです。
さて、まずは、政府の言っている「3分の1の人間が治療をしながら仕事をしている」について、検証をしてみたいと思います。
そもそも、私を含み、働いている人のほとんどは、毎日「疲れが取れない」「○○が痛い」と言いながら働いています。特に仕事が忙しくなってくると、体のいろいろな部分に問題が発生し、加えて、その仕事の量や時間の制約など(ノルマなど)が課せられてくると、心の方も病んできます。
以下の図は、日本人の「自分が、病気やけがをしているという自覚」と「実際に病院に通院している状況(通院率)のデータをグラフにしたものです。
病気やけがの自覚症状は「10〜19歳」が最も低いです。「若いっていいな」と実感します*)。
*)参考:江端さんのひとりごと「渋谷駅の惨劇」
しかし、年齢が高くなるに従って、この自覚症状は増加していきます。「80歳以上」では実に半数以上になっています。具体的には「腰痛」「肩こり」「手足の関節が痛む」などが挙げられます。
ところが、年齢を増すにつれて、通院率が、その自覚症状の比率を上回るという奇妙な現象が生じています。これは、多くの人にとって「腰痛」「肩こり」「手足の関節が痛む」ということが、日常に組み込まれてしまっていると考えられます。
つまり私たちは、「壊れながら生きている」とも言えますし、あるいは「生きるとは壊れること」という諦観の中で生きている、ともいえるかもしれません。
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