Arria 10を統合した「Xeon」、Intelが量産開始:富士通のサーバに採用
Intelは2018年5月17日(米国時間)、データセンターなど向けのプロセッサ「Xeonスケーラブルプロセッサ」について、FPGAを統合した「Xeon Gold 6138P」の量産を開始し、一部のベンダーに向けて提供を開始したと発表した。
FPGAを統合したXeonを発表
Intelは2018年5月17日(米国時間)、データセンターなど向けのプロセッサ「Xeonスケーラブルプロセッサ」について、FPGAを統合した「Xeon Gold 6138P」の量産を開始し、一部のベンダーに向けて提供を開始したと発表した。
Intelは2018年5月17日に東京都内で記者説明会を実施し、同社データセンター事業部 副社長兼Intel Xeon プロセッサー/データセンター・マーケティング事業部長を務めるLisa Spelman(リサ・スペルマン)氏が、データセンター事業について説明。Xeon Gold 6138Pにも言及した。
Xeonn Gold 6138Pは、FPGAを統合したXeonプロセッサとしては初めての量産品となる。「Intel Arria 10 GX 1150(以下、Arria 10 GX 1150)」が統合されていて、1ソケット当たりのI/O帯域幅は最大で160Gビット/秒(bps)である。Arria 10 GX 1150は独立したキャッシュ領域を持ち、Intelのバス「UPI(Ultra Path Interconnect)」を介し、プロセッサとメモリを共有する。
富士通がPCサーバ「PRIMERGY(プライマジー)」のプロセッサとして、Xeon Gold 6138Pを採用する。
データセンター事業が好調なIntel
「PC中心からデータ中心に」をうたい続けているIntel。2018年第1四半期(1〜3月期)の売上高は161億米ドルで、データセンターやIoT(モノのインターネット)、不揮発性メモリ、FPGA、Mobileyeといった、データを中心としたビジネスの売上高が全体の約50%を占めた。Spelman氏によれば、この割合は過去最高だという。同四半期のデータセンター事業部の売上高は52億米ドルで、前年同期比で24%、利益も26億米ドルで前年同期比75%増となっている。
Spelman氏は、データセンター市場の成長をけん引する推進力として、クラウドコンピューティングへの移行、ネットワークの変革、AI(人工知能)やアナリティクスの普及を挙げ、Intelのデータセンター事業部は、とりわけクラウドコンピューティングによって成長が加速したと説明した。同氏は、「同分野では、高性能のシリコンへのニーズが高まっている」と述べる。
Intelのデータセンター向け製品において要となるのが、Xeonスケーラブルプロセッサだ。Spelman氏は、「Xeonスケーラブルプロセッサが、全ての基本となる」と強調する。Xeonスケーラブルプロセッサのアクセラレーションのオプションとしては、「Intel Arria」や「Intel Stratix」といったFPGAや、暗号化や圧縮などのワークロード向けに「QuickAssist」などを提供。「汎用用途から特定用途までのワークロードに対応できる」(Spelman氏)とする。そのラインアップの1つとして、FPGAを統合したXeonが新たに加わったことになる。
データセンター向けのサーバでは、CPUやGPU、FPGAなどを組み合わせるヘテロジニアスアーキテクチャが注目され始めている。Spelman氏は、「基本的にXeonスケーラブルプロセッサは、あらゆるワークロードに展開できる。ただし、もちろん、Xeon+αのアーキテクチャを求める顧客もいる。ヘテロジニアスアーキテクチャを採用する場合、課題となってくるのはプログラミングなどの複雑さだ。そのため、同アーキテクチャを採用したときの性能には魅力を感じるが、複雑な分、敬遠している顧客もいる。そうした顧客のために、複雑さを最小限にできるチップとして、Xeon Gold 6138Pを開発した」と語った。
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