Intel、“組み込みAIチップ”のPC搭載を狙う:Windowsもネイティブサポートへ
Intelは、CPUの他に、Movidiusが手掛けてきたVPU(Vision Processing Unit)のような推論チップを、PCに搭載することを目指しているようだ。
CPUやGPUに加え、VPUも載る?
近い将来、一般的なモバイルPCのマザーボードに、CPUやGPUだけでなく、Intel(Movidius)の「Vision Processing Unit(VPU)」のような、組み込みAI(人工知能)推論チップが搭載されるようになるだろう。
Microsoftは、2018年3月7日に開催した開発者向けイベント「Windows Developer Day」において、Windows OSのマシンラーニング(機械学習)タスクに向けたオープンスタンダードのフレームワーク「Windows ML」を発表したが、この発表から上記のシナリオを導くことができる。Microsoftは現在、IntelのVPU向けに、Windows OSのネイティブサポートを拡張しているところだという。
Intelのマーケティング担当ディレクターを務めるGary Brown氏は、EE Timesの電話インタビューの中で、「今回は、VPUをモバイルPCに搭載すると発表したわけではないが、いずれ、PCのマザーボードへのVPU移行を実現できるはずだ」と述べている。
Windows MLは、急速に過熱しているAI市場において、Windowsを最新版にアップデートする役割を期待されている。Intelは、「Windows MLは、あらゆる種類のAI負荷に対して、最も適したハードウェアをダイナミックに決定し、IntelのVPUをはじめとする複数種類のハードウェアに、インテリジェントに分配することができる」と主張する。
Brown氏は、「VPUは、ビジョンや顔認証、音声、バイオメトリクスなど、CPU/GPUからの重要なAI処理タスクを軽減(オフロード)することができ、処理リソースの開放をサポートすることも可能だ」と述べている。
米国の市場調査会社であるTirias Researchの主席アナリストを務めるKevin Krewell氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「Windowsのネイティブサポートを追加することで、ディベロッパー各社に対し、MovidiusのVPUが主流派になっていくと主張することになる」と述べる。
しかし同氏は、「VPUを搭載すべき場所が本当にPCなのかどうか、定かではない。VPUは、MicrosoftのAR(拡張現実)向けヘッドセット『HoloLens』のような、次世代AR/VR(仮想現実)製品への搭載には適しているだろう。しかしPCには、画像処理のためのCPU/GPUをはじめ、十分な処理能力があることから、VPUをPCに搭載することに意味があるのかどうかは不明だ。IntelのVPUが最もうまく機能するのは、ドローンのような、電力に制約のある機器だろう」と述べる。
さらに、「今回の取り組みはMicrosoftにとって、ドローンやロボットなどの新しい分野にWindowsを拡張していく上での最初の一歩となるだろう」と付け加えた。
AI市場は現在、急速に拡大しつつあるため、Microsoftは、それに追い付かなければならないというプレッシャーにさらされている。「OpenCL」などのAPI(Application Programming Interface)を策定するKhronos Group(クロノス・グループ)は2017年に、低レベルのMLフレームワークの策定に向け、グラフィックスAPIのような汎用APIを策定することを目標とした、独自の取り組みを既に開始している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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