地図とOTA、自動運転の核心技術を押さえる「HERE」:業界スタンダードを狙う(2/2 ページ)
高精度地図データの提供を行うHEREは2018年5月22日、グローバルでの高精度地図提供を目的とした企業間アライアンス「OneMap Alliance」の結成と、自動車に搭載されるソフトウェアのアップデートや機能追加を無線環境で実現するOTA(Over the Air)ソリューション「HERE OTA Connect」を発表した。
コンピュータ化が進む自動車を攻撃者から保護するOTA
HERE OTA Connectは、OEMのバックエンドシステムと車両の間でデータ、ソフトウェアなどを転送し、車両のソフトウェア機能をセキュアに更新、追加することができるサービス。同サービスは、2018年1月に同社が買収したAdvanced Telematic Systems(ATS)の技術が投入された。
コネクテッドカーや自動運転車については、OTAのコンプライアンスについて各国政府や国際機関で議論が進められている。米国や英国、ドイツでは、この点について法規制が導入される方針で、グローバルでは国連傘下の「自動車基準調和世界フォーラム(UNECE WP29)」が2018年半ばに勧告を発行し、2019年に採決が行われる見込みだ。
そのような状況で、HERE OTA Connectは車載ソフトウェアに特化して設計されたセキュリティフレームワーク「Uptane」を実装している。Uptaneは、米国国土安全保障省の支援を受け、ニューヨーク大学タンドン工科校などが開発に取り組んでおり、オープンソースにより公で検証を受けていることが特長。万が一、攻撃を受けた場合においても影響を緩和することができるという。
HERE OTA Connectでは、「ソフトウェアアップデートを行う場合に、鍵(暗号署名)を1つに限定するのではなく、複数の鍵を用いている。ソフトウェアカタログにアクセスする鍵とキャンペーンディレクトリにアクセスする鍵は別のものを利用し、車両側で一致を確認することで攻撃に対する耐性を高めた」(Ralf Herrtwich氏)とする。
Ralf Herrtwich氏は「HERE OTA Connectは、無線接続で信頼性の高いソフトウェアアップデートが提供できる。また、将来的に出てくるであろうOTAに関する法規制においても、OEMに対してサポートを行うことが可能だ」とまとめた。
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