成長するMEMS市場、勢力図も急速に変化:Broadcomがシェアトップに(3/3 ページ)
Robert Bosch(以下、Bosch)とSTMicroelectronicsはいずれも、2017年のMEMS市場ランキングにおいてトップの座に就くことができなかった。世界第1位のMEMSメーカーの座を獲得したのは、Broadcomだったのだ。MEMS市場は、モバイルと自動車にけん引され、急速に成長している。それに伴い、勢力図にも変化が訪れている。
成長するMEMSファウンドリー各社
ファウンドリー市場で注目すべき変化についてMounier氏に問うと、意外な答えが返ってきた。同氏はまず、Teledyne DALSAの堅調な成長に言及した。Teledyne DALSAの2017年の売上高は、わずか1年で1000万米ドルの伸びとなる6000万米ドルに達した。自らを「世界最高のMEMS専業ファウンドリーの一つ」と呼ぶTeledyne DALSAは、多様な種類にわたるデバイスを製造する能力を強化している。そのようなデバイスは、通信用マイクロミラーから、ゲームコントローラー用のジャイロセンサー、微細化された医療システム向けのマイクロ流体デバイス、自動車用圧力センサーおよび慣性センサー、スマートフォン用マイクまで、多岐にわたる。
スウェーデンのSilex Microsystemsも、急速に成長するMEMS専業ファウンドリーである。同社のファウンドリー事業の規模は、2016年の4100万米ドルから2017年には5000万米ドルまで拡大した。
だが、Mounier氏が最も驚かされたのは、オランダのアイントホーフェンに拠点を置くPhilips Innovation Servicesだという。Philips R&Dのスピンアウトである同社は、数多くの(現時点では名を明かされていない)顧客を取り込んでいるようだ。Philips Innovation Servicesは、カスタマイズのMEMSデバイスを設計、開発、納入することと、マイクロデバイスを組み立てる技術を売り込んでいる。Philips Innovation Servicesによれば、同社のMEMSファウンドリー部門には140人ものエキスパートが所属していて、「MEMSのプロトタイピング、MEMSプロセス開発、MEMS製造」を担っているという。
多数の新興企業も
MEMS技術の多様性を促し、将来へと前進させるのは、新たな種類のMEMS技術に投資し、異なる素材を試用する数々の新興企業だ。
Mounier氏によると、注目すべき新興企業の一つであるUSoundは、「2019年にMEMSマイクロスピーカーを発表できるよう、急ピッチで取り組んでいる」という。その他、圧電マイクを手掛けるVesperは、最近Amazonを含む投資家から2300万米ドルの資金提供を受けた。車載用ライダーに対する熱望が続く中、RoboSenseやInnovizといったライダー関連企業も、多くの注目を集めているという。3Dセンシング技術を手掛けるChirp Microsystemsは、2018年始めTDKに買収された。Mounier氏は、Misticというフランスの新興企業の名も挙げ、「生体適合性のある医療機器向けのチタニウムMEMSを手掛けている」と説明した。
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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