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日系大手電機メーカー8社の今後を占う大山聡の業界スコープ(6)(3/3 ページ)

日系各社は中長期的な戦略を立案する上でさまざまな課題を抱えている企業が多いように思う。経営陣と現場のコミュニケーションが十分に取れていないことが原因ではないか、と思われるフシが散見されるのだ。電機大手各社を例にとって、過去10年間の変遷を見ながら、各社がどのような経営を行ってきたのか。そして、今後の見通しはどうなのか、について考えてみたい。

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安定性および成長性で日立、パナソニックに期待

 2017年度に過去最高益を更新した日立製作所も今後が期待される企業の1社だが、三菱電機の約2倍に匹敵する事業規模を持ちながら、当期利益では下回ることがあり、利益率に物足りなさを感じる。800社を超える連結子会社を500社程度に絞り込みたい、という方針を打ち出しているものの、具体的な手法は未定のようだ。親子上場している連結子会社も多く、グループとしての戦略に一貫性を持たせるために困難を伴うこともあるだろう。日立特有の課題、と言っても良いかもしれない。


ソニーは2018年度から吉田憲一郎氏が社長兼CEOが就任し、新たな中期経営計画をスタートさせた

 ソニーも2017年度は過去最高益を更新しているが、連続して黒字決算を計上できるようになったのは2015年度からで、同社が完全復活を成し遂げたと判断するのは時期尚早だろう。株主資本率を見ると、2010年度末に20%を下回ってからずっと10%台に低迷したままで、過去に計上した巨額の赤字がバランスシートを痛めつけたままになっている。最高益からさらなる飛躍を目指す上で、どの事業がけん引役になるのか、現状では判断がつかないことも気になる点だ。

 ソニーと比較されることが多かったパナソニックは、2011年度、2012年度の2年間で1.5兆円を超える巨額の赤字を計上したが、この間にB2C(Business to Consumer)主体からB2B(Business to Business)主体へと大きく方向転換したことがようやく功を奏し始めた。約8兆円という事業規模を考えると、当期利益の水準はまだ物足りないが、安定性および成長性という点では日立と同様に期待できる1社と言えそうである。

 前回の「AIの活用方法について考える」でも述べたが、NECおよび富士通の2社は現時点でもっと脚光を浴びていても良いはずの企業である。AIをどのように活用するのか、今後10年の進化をどのように考えるべきなのか、この2社はむしろ日本国内をリードしながらITユーザーのための指南役を買って出て頂きたいところだ。しかしながら、当期利益が500億円に満たないNECも、具体的な中期経営計画を策定できていない富士通も、脚光を浴びるどころか、主張が地味すぎるように感じているのは筆者だけだろうか。

 以上、大手電機8社の今後の見通しについて、勝手気ままな私見を述べさせていただいたが、読者の方々ともご意見を交換させていただく機会があれば幸いである。

筆者プロフィール

大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表

 慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。

 1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。

 2010年にアイサプライ(現IHS Markit Technology)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。

 2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。


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