検索
連載

旭化成のCVCが成功に向かっている、4つの理由イノベーションは日本を救うのか(26)(3/3 ページ)

今回は、シリコンバレーでのCVC(コーポレートベンチャリング)活動としては、数少ない成功事例ともいえる、旭化成を紹介したい。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

CVCに合っていた企業カルチャー

 その他、M氏は旭化成の企業カルチャーも、CVCに合っているのではないかと話す。もともと旭化成は、外部から技術や事業を買収して、成長してきた企業である。例えば、半導体プロセスは、日立製作所から譲り受けている。またヘーベルハウスも、1960年代初めのドイツからの技術導入に基づいている。そのため、昔から、外部のものを取り込むことに抵抗感が少ないカルチャーだったのだ。

 このようにして、旭化成CVCは、ローカルで意思決定ができる形に育っていった。これまでの活動で、通算で14社に投資(そのうち、2社を買収)、3社をエクジット(現金化=例えば株式を売るなど)している。


旭化成CVCの成果。投資している企業および買収(Acquired bt AK)やエクジット(Exit)した企業を示している 出典:旭化成(クリックで拡大)

日本との連携スキームも進歩

 M氏によれば、近頃は、日本の事業部門からも頼られるようになってきたという。事業部門から、興味のあるベンチャー企業との連携のコーディネートを依頼されるようになってきたというのだ。CVC活動に対する社内の理解が向上していることのあらわれだろう。

 こうした経緯で、日本の事業部門からシリコンバレーの旭化成CVCのオフィスに従業員が派遣されてくるようになった。ただ、全員、夕方(日本の朝)になると日本とビデオ会議をやりたがり、これまでのオフィスでは会議室が足りなくなってしまった。そこで、旭化成CVCは2017年、もっと広いオフィスに移っていった。


旭化成CVCを活用した連携スキーム 出典:旭化成(クリックで拡大)

 余談ではあるが、今回掲載した資料は旭化成CVCが提供してくれたものだ。筆者にいわせると、CVC活動について、これだけ資料を公開してくれるところも珍しい。このようなオープンさも、成功の要素なのかもしれない。


「イノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜」連載バックナンバー


Profile

石井正純(いしい まさずみ)

日本IBM、McKinsey & Companyを経て1985年に米国カリフォルニア州シリコンバレーに経営コンサルティング会AZCA, Inc.を設立、代表取締役に就任。ハイテク分野での日米企業の新規事業開拓支援やグローバル人材の育成を行っている。

AZCA, Inc.を主宰する一方、1987年よりベンチャーキャピタリストとしても活動。現在は特に日本企業の新事業創出のためのコーポレート・ベンチャーキャピタル設立と運営の支援に力を入れている。

2005年より静岡大学大学院客員教授。2012年より早稲田大学大学院ビジネススクール客員教授。2006年より2012年までXerox PARCのSenior Executive Advisorを兼任。北加日本商工会議所(2007年会頭)、Japan Society of Northern Californiaの理事。文部科学省大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)推進委員会などのメンバーであり、NEDOの研究開発型ベンチャー支援事業(STS)にも認定VCなどとして参画している。

2016年まで米国 ホワイトハウスでの有識者会議に数度にわたり招聘され、貿易協定・振興から気候変動などのさまざまな分野で、米国政策立案に向けた、民間からの意見および提言を積極的に行う。新聞、雑誌での論文発表および日米各種会議、大学などでの講演多数。共著に「マッキンゼー成熟期の差別化戦略」「Venture Capital Best Practices」「感性を活かす」など。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る