エッジでAIの学習も、アナログ素子で脳型回路を開発:ReRAMを応用して高電力効率に
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)らは、アナログ抵抗変化素子(RAND)を用いた、AI(人工知能)半導体向け脳型情報処理回路を開発した。エッジ側で学習と推論処理が可能となる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年6月、産業技術総合研究所(産総研)、パナソニックセミコンダクターソリューションズ、北海道大学と共同で、アナログ抵抗変化素子(RAND:Resistive Analog Neuro Device)を用いた、AI(人工知能)半導体向け脳型情報処理回路を開発したと発表した。電力消費が小さく、エッジ側に推論処理と学習処理の機能を実装することが可能となる。
家電製品やロボットなどAIを実装した製品が相次ぎ登場している。ところが、AIの学習処理は演算量が膨大となるためクラウドシステム側で行い、エッジ側ではその処理結果を基に、推論処理のみを実行しているのが現状だ。
アナログ抵抗変化素子を採用、低消費電力動作を実現
今回の研究では、学習処理もエッジ側で実行できるAI半導体の開発を目指した。これによって、処理能力や消費電力の点で限界のあった端末機器やIoT(モノのインターネット)機器などでも、開発したICを搭載すればクラウド側に頼ることなく、エッジ側のみで容易にAI技術を活用することが可能となる。
研究グループは今回、RANDを用いてデータ保存機能と積和演算機能を一体化したAI半導体向け脳型情報処理回路を開発した。RANDは、既に実用化されている不揮発性抵抗変化メモリ(ReRAM:Resistive Random Access Memory)をベースとした積層構造の素子で、パナソニックセミコンダクターソリューションズのReRAM製造プロセスを応用して開発した。
研究グループによると、180nmプロセスで開発したRANDは、30μAのダイナミックレンジで、ほぼ全てのデータが±2μAの範囲内に設定できることが分かった。この結果、RANDによる脳型情報処理回路の文字認識率は90%を超えた。さらに、線幅40nmプロセスで試作したRANDテストチップは、セル電流を抑えることに成功した。演算性能は1Wあたり66.5TOPS(Tera Operations per Second)と、極めて小さい消費電力で動作が可能だという。
研究グループは今後、開発した技術の活用と普及に向けた環境を整備する。例えば、「誰でもAIの体験と実験が行える脳型情報処理活用プラットフォームの本格運用」や、「アナログ抵抗変化素子の作成を含む、関連技術の習得を目指した人材育成スクールの開校」などを予定している。2018年8月より実施する予定である
具体的には、AIに特化したメモリアーキテクチャを備えた「FPGA AIシールド」と、ArduinoマイコンをSPIで接続した「ソフト・ハード協調システム」を用いて、ハードウェアAIの体験ができる。なお、FPGA AIコアのHDLおよび、Arduinoサンプルライブラリーはオープンソースとして活用することが可能だ。
研究グループは、エッジ処理用途を想定した脳型AI半導体の実用化研究や微細化の追求、制御性や信頼性の向上などに引き続き取り組む。さらに、さまざまな深層学習手法に対応できるFNA(Flexible Network Architecture)としての開発も行う予定である。
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