Keysight、110GHz帯域の超高性能オシロスコープを発表:サンプリング速度は毎秒256Gサンプル
Keysight Technologies(日本法人:キーサイト・テクノロジー)は2018年7月12日、オシロスコープの新製品として帯域幅最大110GHzを誇る「Infiniium UXRシリーズ」を発表した。
Keysight World 2018(東京)で初公開
Keysight Technologies(日本法人:キーサイト・テクノロジー)は2018年7月12日、自社顧客向けイベント「Keysight World 2018」(会場:東京・JPタワーホール&カンファレンス/会期:2018年7月13日まで)で、オシロスコープの新製品として帯域幅最大110GHzを誇る「Infiniium UXRシリーズ」を発表した。10Gビット分解能で、サンプリング速度256Gサンプル/秒の性能を持ち、テラビット級の次世代高速通信研究用途などに向ける。発売は、2019年2〜3月ごろを予定している。
「Infiniium UXRシリーズ」を発表したKeysight Technologiesのプレジデント兼CEOのRon Nersesian氏(右)とシニアバイスプレジデント兼最高技術責任者のJay Alexander氏
帯域幅110GHz、サンプリング速度256Gサンプル/秒など「多数の業界最高性能を達成した」(Keysight Technologiesシニアバイスプレジデント兼最高技術責任者 Jay Alexander氏)という同社オシロスコープのフラグシップモデルを世界に先駆け東京でお披露目した。「日本では、多くの技術革新が生まれており、Keysightにとって重要な市場である。だからこそ、発表の地として日本を選んだ」とAlexander氏はその理由を説明する。
Infiniium UXRシリーズが主にターゲットにするのが、次世代高速ネットワーク技術の研究領域。「世界中がネットワークでつながりつつある中、データ量の増大に伴いより高速なネットワーク技術が求められている。400Gビット/秒(bps)通信の先に、800Gbps、1Tbpsという超高速通信技術が見え隠れしはじめているが、そうした次世代の超高速通信技術を正確に測定できるツールはこれまで世界に存在しなかった。その中で、Infiniium UXRシリーズは、1T超のネットワーク研究にブレークスルーを与えるオシロスコープ」(Alexander氏)
優れたシグナルインテグリティ性能
既に完成しているInfiniium UXRシリーズの試作機では、ノイズフロア1.0mVrms未満、内部ジッタ25フェムト秒(fs)rms未満、チャンネル間ジッタ35fsrms未満を達成。有効ビット数(ENOB)は、100GHz時5ビット、110GHz時4.5ビットとなっている。Alexander氏は「こうした優れたシグナルインテグリティ性能は、量産機ではさらに向上する可能性がある」と見通しを語る。
こうした性能により、1Tbpsクラスのネットワークに適用される可能性のある64GBaud、256QAMのコヒーレント変調信号についても、「従来のオシロスコープで、64GBaud、256QAMのコヒーレント変調信号のEVM測定は不可能だった」(同氏)という中で2.6%のエラーベクトル振幅(EVM)を測定できたとする。
Infiniium UXRシリーズは、帯域幅80GHzモデル、100GHzモデル、110GHzモデルをラインアップする予定。価格は「1億円から1億8000万円程度になる見込み」(キーサイト・テクノロジー・ジャパン)とする。
日本市場重視の姿勢を強調
Keysight World 2018で開かれた記者会見には、Keysight Technologiesプレジデント兼CEOのRon Nersesian氏も登壇し、日本市場を重視した事業展開を継続していく姿勢を強調した。Nersesian氏は「日本には世界最大規模の自動車産業がある。また2020年の東京五輪開催に向けて日本で画期的な技術、サービスが生まれようとしている。そうした点から、Keysightにとって日本市場は魅力のある市場であり、これからも日本の顧客への支援を強化していく」とした。
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