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田中貴金属、燃料電池用電極触媒の生産能力を7倍に:水素社会に向け安定供給を実現
田中貴金属工業は湘南工場(神奈川県)内にあるFC触媒開発センターを増設する。新棟建設により、燃料電池用電極触媒の生産能力はこれまでに比べ7倍となる。
世界的な需要増加に対応
TANAKAホールディングスは2018年7月、田中貴金属工業の湘南工場(神奈川県平塚市)内に新棟を建設しFC触媒開発センターを増設すると発表した。今回の増設により、燃料電池用電極触媒の生産能力はこれまでに比べ7倍となる。投資額は約40億円。
FC触媒開発センターは、燃料電池自動車(FCV)や家庭用燃料電池「エネファーム」などで用いられている固体高分子形燃料電池(PEFC)用の電極触媒を開発、製造している。カソード(空気極)向け白金触媒やアノード(燃料極)向け白金合金触媒である。
PEFCは、小型軽量で高い出力を得られるのが特長で、FCVなどに加え今後は、バスやフォークリフトなど、さまざまな用途での活用が期待されているという。また、中国や欧州などの市場でも燃料電池の急速な需要増加が見込まれている。
燃料電池用電極触媒で世界トップクラスのシェアを持つ同社は、燃料電池の普及と本格的な水素社会の実現に向けた動きに対応するため、燃料電池用電極触媒の増産投資を決めた。具体的には、FC触媒開発センターの隣接地に、製造出荷棟と保管庫棟を増設した。これら増設棟は延べ床面積が約3000m2。2018年7月18日に完成し、2019年1月より本格稼働の予定である。
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