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AIの開発、半導体業界にとってますます重要にどの企業も何らかの形で関わる?(2/2 ページ)

どの半導体メーカーが、何らかの形でAI(人工知能)分野に携わっているのかは、簡単にリストアップすることができる。ほぼ全てのメーカーが該当するからだ。機械学習(マシンラーニング)は、幅広い可能性を秘めているため、ほとんどの半導体チップメーカーが研究に取り組んでいる状況にある。

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ソフトウェアの提供も増加

 DSP分野のアナリストで、「Embedded Vision Alliance」の創設者でもあるJeff Bier氏は、「アプリケーションの多くは通常、ソフトウェアを正しく動作させていれば、特別なシリコンを必要としない。Qualcommの『Snapdragon』をはじめとする既存の半導体チップは、その用途が明確な場合、AIの処理で非常に優れた性能を発揮する」と説明する。

 多くのメーカーが、既存のCPU/GPU/DSPコア上でディープラーニングジョブを実行するためのソフトウェアを提供している。Armは、同社のローエンドコア「Cortex-M」上でコンピュータビジョンタスクを実行する方法について、ウェビナーなどで解説している。一方で、ディープラーニングに特化したアクセラレーターコアも発表している。

 Qualcommは2018年4月に、IoT(モノのインターネット)にAI機能を追加するという狙いで、新しいチップ「QCS603」「QCS605」および、関連ソフトウェアを発表した。これらは基本的にSnapdragonの一種であるが、一部は、産業ユーザー向けに寿命を延長したバージョンもあるという。

AIを狙い、M&Aを進めてきたIntel

 Intelは、推論と学習の両方に向けたハードウェアアクセラレーターを手掛ける新興企業を、積極的に買収してきた。2016年にMovidiusを買収しているが、これは、セキュリティカメラや、中国DJI製のドローンに搭載されている既存の半導体チップを、クライアントシステムに搭載するための動きだったようだ。

 Movidiusのコアは、Intelが買収によって取得した、いくつかのアーキテクチャの中の1つにすぎない。Intelが2016年に買収したNervanaのアクセラレーターは、主にニューラルネットワークのトレーニングに焦点を絞っている。さらに、2017年には、自動運転車向けAIに特化した半導体チップを開発すべくMobileyeを買収した。

 自動車分野は、特に競争が激しい。多くの新興企業が同分野に注力しているのだ。自動運転技術の開発を手掛けるハンガリーのAImotiveは現在、自社車両に搭載するテストチップを設計している。

組み込み分野での取り組み

 世界最大手の組み込みプロセッサメーカーも、ディープラーニングの研究開発を進めている。

 米国の市場調査会社であるThe Linley GroupのアナリストであるLinley Gwennap氏は、「ルネサス エレクトロニクスはこれまで、車載プロセッサ向けにニューラルネットワークエンジンを提供しているが、他の市場向けの製品はなかった」と述べている。しかし、同社は2018年6月に開催された「VLSI Symposium」で、動的に再構成可能な組み込みAI向けアクセラレーターに関する論文を発表している。

 IBM Researchは同イベントで、1W当たり数TOPSの演算性能を実現するディープラーニングコアを発表した。また、MediaTekは、ディープラーニング技術を使用した4Kビデオエンコーダーについて説明した。

 大手マイコンメーカーは、ディープラーニング向けの製品計画はまだ公表していないが、間違いなく研究を進めている企業がある。アナリストのDemler氏は、「Microchip TechnologyやSTMicroelectronics、Texas Instruments(TI)に関しては、ディープラーニング分野に関する話はまだ聞こえてこない」と述べている。

 NXP Semiconductorsは2018年1月に、「i.MX」SoCを搭載したプロトタイプのスマート電子レンジと冷蔵庫でディープラーニングアプリケーションを実行するデモを行った。FoodNet(Foodborne Diseases Active Surveillance Network:食品由来疾患アクティブサーベイランス)は、既存のGPUブロックとArmの「Cortex-A」およびCortex-Mコアを組み合わせ、最大20個の分類器を実行して8ミリ秒〜66ミリ秒で推論処理を実行するチップを披露した。

 NXP Semiconductorsは多くの組み込みチップベンダーと同様に、サードパーティーのアクセラレーターメーカーと近く提携する予定だが、将来的には独自のAIアクセラレーターブロックの提供を目指しているという。

 QuickLogicは、一足先を進んでいる。同社は2018年5月4日に、スマートスピーカーに搭載されている「EOS S3」チップとNepesのAIアクセラレーターチップを組み合わせた「Quick AI」プラットフォームを発表した。同プラットフォームは、サードパーティー2社のソフトウェアで、ファクトリービジョンシステムや予知保全、ドローン向けにアルゴリズムをカスタマイズして学習することができるという。

 Googleは、TPUに関する論文の中で、ディープラーニングには大量のメモリを搭載した大規模積和演算(MAC)アレイの形で、線形代数アクセラレーターが必要だと説明している。Gwennap氏によると、一部のデバイスでは、アクティベーションやプーリングなどのニューラルネットワークの特定機能向けにハードウェアを追加しているという。

 Lattice Semiconductorは、FPGAに2つのアクセラレーターコア(広く使われている畳み込みニューラルネットワーク用と2値化ニューラルネットワーク用)を搭載した製品を提供している。

 現時点では、プロセッサやプロセッサコアを開発しているほとんど全てのメーカーが、いずれはAIに関連するアクセラレーターの開発を進めていくことになるという見方が妥当だろう。

【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】

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