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東北大、AlB2で線ノード型ディラック粒子を発見トポロジカル量子コンピュータ実現に貢献

東北大学は2018年7月、2ホウ化アルミニウム(AlB2)が「線ノード型ディラック粒子」という特殊な電子状態を持つ物質であることを発見した。

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移転温度が1桁高いトポロジカル超電導体を可能に

 東北大学は2018年7月、AlB2(2ホウ化アルミニウム)が「線ノード型ディラック粒子」という特殊な電子状態を持つ物質であることを発見したと発表した。このディラック粒子を超電導化すれば、トポロジカル超電導体の転移温度を高温化できる可能性があり、トポロジカル量子コンピュータの開発につながるとみられている。

 今回の成果は、東北大学大学院理学研究科の高根大地博士課程院生や木村憲彰准教授、佐藤宇史教授、同材料科学高等研究所の相馬清吾准教授、高橋隆教授、同多元物質科学研究所の組頭広志教授および、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の堀場弘司准教授らの共同研究によるものである。

 ディラック粒子とは、英国の物理学者であるディラック氏が約80年前に提唱した粒子。電子が動きやすく、通常の電子系とは異なる量子効果を示すという。これまでグラフェンやトポロジカル絶縁体の表面で点状のノードが確認されている。ところが、線ノード型ディラック粒子を持つ物質は、これまで確認された例がほとんどないという。

 こうした中で近年、青山学院大学(当時)の秋光純教授らが2001年に発見した超電導体「MgB2」が、トポロジカル超伝導体になるのではないかと提案されている。MgB2は、ホウ素で組まれた蜂の巣格子シートでMgを挟んだ層状物質。グラフェンと類似した性質を持ち、39Kの高温で超電導の特性を示すという。


MgB2(あるいはAlB2)の結晶構造 出典:東北大学

 東北大学と高エネルギー加速器研究機構の共同研究グループは今回、MgB2のMgをAlで置き換えたAlB2の高品質単結晶を作製した。この単結晶の電子状態を、放射光科学研究施設フォトンファクトリーに設置されている軟X線角度分解光電子分光装置を用いて測定した。


軟X線角度分解光電子分光の概念図 出典:東北大学

 この結果、ディラック粒子の特長でもあるX字型のバンド分散を観測することができたという。さらに高い精度で測定を行ったところ、AlB2のディラック粒子が、エネルギーを変えながら面直方向に連なる「線ノード」型と呼ばれる特殊な電子状態であることが分かった。これは、AlB2の蜂の巣格子が、「AA積層」と呼ばれる上の格子と下の格子の横位置が同じになるパターンで積層することに起因しているという。


左は角度分解光電子分光によって得られた3カ所の測定点におけるAlB2のバンド分散。右はAlB2における線ノード型ディラック粒子のエネルギー状態を示す模式図 出典:東北大学

 研究グループは、AlB2とMgB2の電子状態は類似しており、MgB2の超電導を保ちつつ、π軌道に十分な電子を供給できれば、極めて高い移転温度を持つトポロジカル超電導体を実現できるとみている。

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