Intelの次期プロセッサ、AI機能を追加:推論性能は既存の11倍
Intelは、米国カリフォルニア州の本社で開催した「Intel Data-Centric Innovation Summit」において、次期サーバ向け「Cascade Lake」「Cooper Lake」「Ice Lake」の詳細などを発表した。
「ムーアの法則」の鈍化は、半導体業界全体に影響を及ぼしているが、Gordon Moore氏が共同設立した企業、つまりはIntel以上に、その鈍化を意識してきた企業は恐らく存在しないだろう。Intelは米国カリフォルニア州サンタクララにある本社で開催した、データセンター事業部などの戦略説明会「Intel Data-Centric Innovation Summit」(2018年8月8日)において、回復基調を示しながら、自社が時代とともにどのように大きく変化してきたかをアピールした。
最近のIntelで最も興味深いのは、メモリや機械学習に関する開発の他、Jim Keller氏のようなロックスター的存在のエンジニアたちである。今回のイベントでも、これらの要素が特に目立つように取り上げられていた。
3つの次期プロセッサにAI機能を追加
次の目玉となるプロセッサ「Cascade Lake」「Cooper Lake」「Ice Lake」(いずれも開発コード名)もイベントで取り上げられ、AI機能が追加されたことなどが注目された。これらのプロセッサは、現在「Google Cloud」向けに出荷されている「Optane DIMM」の横に並べられた。Optane DIMMは今後、スマートネットワークカードに向けて出荷されることも予定されている。
米ウォール街のアナリストらは、Intelの遅れに遅れた10nmプロセスに関する情報を渇望している。だがIntelのデータセンター部門のゼネラルマネジャーで、今回のイベントでホストを務めたNavin Shenoy氏は、「私は顧客と、具体的なプロセスの話をしない。顧客が気にするのは、彼らが採用したシステムの性能だ」と述べ、Intelが数多くの手段を通じてそのような能力を実現していることに言及した。
Intelが2017年立ち上げたプログラム「Select Solution」では、オープンソースのクラスタコンピューティングフレームワークである「Apache Spark」上のブロックチェーンハッシング、深層学習など、増え続ける一連の作業に向けてカスタマイズされたシステムを構築および評価することができる。あるエグゼクティブは「チキンマサラを食べたいという人に、材料を全部送るようなものだ」と説明している。
メニューには既にFPGAといくつかの機械学習用アクセラレーターの他、x86 CPUが含まれている。2019年には、グラフィックス領域での豊富な経験を持ち、AppleやAMDでも勤務したことのあるRaj Koduri氏が率いるチームが新たに設計したGPUが加わることになる。
Intelの新たなGPUは、NVIDIAの「Volta」とは異なるものになるという。Intelのあるエクゼクティブによれば、Voltaではグラフィックスの異なるパイプラインと深層学習タスクを同時に処理できないが、Intelの新しいチップでは、グラフィックとビジュアルコンピューティングにフォーカスし、それらのアプリで使われる機械学習にも一部対応可能だという。
他社と同様に、IntelはあらゆるところでAI(人工知能)のサポートを提供している。AIのサポートは、CPUのロードマップにおいて要でもある。
2018年末に出荷を開始する予定の次世代サーバ向けCPUであるCascade Lakeは、既存の「Skylake Xeon」に比べ、深層学習の推論性能が11倍向上すると主張している。
2019年後半に登場する予定の、14nmプロセスを適用したCooper Lakeでは、Googleが採用している新しい浮動小数点形式「bfloat16」をサポートする予定だ。IntelのAIグループでゼネラルマネジャーを務めるNaveen Rao氏は、「Intelの深層学習向けアクセラレーターである『Lake Crest』は別のフォーマットを採用していたが、bfloat16は顧客の要望が強いということが分かった」と説明している。
Intel初となる、10nmプロセスを使用したサーバ向けCPUであるIce Lakeは、2020年の出荷開始を予定している。Cooper Lakeとはピン互換となる予定で、Ice Lakeへのアップグレードが容易になるとする。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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