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光送受信器の構造と性能向上手法:福田昭のデバイス通信(160) imecが語る最新のシリコンフォトニクス技術(20)(2/2 ページ)
光送受信器の構造と性能向上(スケーリング)について解説する。性能向上の手法は主に、高速化、多値化、多チャンネル化の3つの方向性がある。
高速化、多値化、多チャンネル化で性能を向上
光送受信器の性能向上(スケーリング)手法には、主に3つの方向がある。1つは高速化だ。チャンネル当たりの転送速度そのものを高める。例えば、10Gbpsから25Gbps、50Gbpsへと転送速度を上げる。
もう1つは、多値化である。伝送シンボル当たりのビット数を増やすことで、実効的な伝送速度を高める。代表的な手法には、振幅を変調して4値を伝送する「PAM(Pulse Amplitude Modulation )-4」(4値パルス振幅変調)と、位相を変調して4値を伝送する「DP-QPSK(Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying)」(2重偏波直交位相遷移変調)がある。いずれもシンボル当たりで2ビットのデータを伝送する。
3つ目は、多チャンネル化である。伝送チャンネルの数を増やすことで、実効的な伝送速度を高める。例えば光ファイバーの本数を増やす。光ファイバーは1本のままで、ファイバー内部のコア(光の通路)を増やすという手法もある。あるいは、波長の異なる複数の光によって信号を伝送する。
これら3つの手法を組み合わせることで、伝送速度をさらに高めることができる。
光送受信器(光トランシーバー)の性能向上(スケーリング)手法。チャンネル当たりの転送速度を高める(上方向の矢印)、シンボル当たりのビット数を増やす(左下方向の矢印)、伝送チャンネルの数を増やす(右下方向の矢印)、という3つの手法がある。出典:imec(クリックで拡大)
(次回に続く)
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