東芝、鉄道車両向け振動発電モジュールを開発:台車を監視し重大事故を予防
東芝は2018年9月5日、同社従来製品より発電量を約2倍に高めた鉄道車両監視向け振動発電モジュールを開発したと発表した。
東芝は2018年9月5日、同社従来製品より発電量を約2倍に高めた鉄道車両監視向け振動発電モジュールを開発したと発表した。
鉄道車両の脱線など重大事故を防ぐため、台車向け状態監視システムの開発が進んでいる。しかし、台車に設置する状態監視センサーの電源ケーブルを後付けで車両から敷設することは困難な場合が多く、台車の環境振動を利用した振動発電がセンサーシステムの自立電源として期待されている。
一方で、信号処理や無線データ伝送などに要する全ての電力を振動発電などで賄うことは従来技術では不十分であり、監視システムの省電力化と並行して振動発電の高出力化が望まれていた。
等価抵抗を任意に調整できる整流変圧回路を新開発
振動発電の高出力化では、振動発電機の体積発電電力密度を高めるとともに、発電機から得られた電力を効率良く整流、変圧する必要がある。東芝では、これまでに磁石配置を工夫して発電密度を高めた独自構造の電磁誘導型振動発電機を開発。この振動発電機を用いた実振動環境下での性能評価を実施し、鉄道総合技術研究所の試験線で有効に発電できることを立証している。
今回、新たに整流変圧回路を備えた振動発電モジュールを開発し、発電電力を従来モジュールの4.0mWから約2倍の8.9mWに高めることに成功した。この整流変圧回路は等価抵抗を任意に調整でき、振動発電機から効率的に電力を得ることができる最大電力動作点での発電条件に設定することが可能となった。
今後、設計のさらなる適正化や環境耐久性の改善など、鉄道車両台車への設置適用を目的とした研究開発を進めるとした。
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