貿易摩擦に屈しない、中国半導体技術の“体力”:製品分解で探るアジアの新トレンド(31)(2/3 ページ)
トライ&エラーを繰り返し、着実に実績をつけている中国の半導体技術。こうした実績はやがて、貿易摩擦などの圧力に屈せず、自国の半導体で多様な機器を作ることができる“体力”へとつながっていくのではないだろうか。
“点のデバイス”ではなく“面のデバイス”へ
テカナリエでは、HiSiliconのHI3518など多くの監視カメラ用チップは開封して内部の構造からコストまでを解析している。図2はVSTARCOMの監視カメラに搭載されている他チップである。
イーサネットも搭載されている製品で、トランスフォーマー、監視カメラのカメラ部の方向を変えるためのモーターが搭載されている他、モータードライブチップ、電源制御系チップなどが中国製半導体で構成されている。Wi-Fi通信チップやメモリは台湾チップだ。中国半導体はメインのプロセッサだけでなく、制御や通信電源機能などにも採用されており、“点のデバイス”ではなく、面を形成するデバイスとなっているわけだ。
図3は、2018年7月に発売されたAmazonのディスプレイ付きスマートスピーカー「Echo Spot」の分解の様子である。
従来のスマートスピーカー機能に加え、カメラとディスプレイが付加されたものになっている。内部の多くは台湾製半導体と米国製半導体で構成されている。オーディオ系は米Texas Instruments(TI)、プロセッサは台湾MediaTekである。ともにAmazon向けの半導体ではなく、タブレットやオーディオ機器など多くの製品で採用実績が多い、汎用チップの組み合わせとなっている。
そういった製品にも中国製半導体が多数採用されている。例えば、ディスプレイのタッチパネルコントローラーには中国Goodix Technology(以下、Goodix)のチップが採用されている。
年間300製品も分解すると、”最もよく出くわすチップメーカー“が、当然ながらある。中国半導体では、先述したタッチパネルコントローラーのGoodixやWi-Fiチップを手掛けるEspressif Systems、NOR型フラッシュメモリのGigaDeviceなどは世界中(もちろん日本製品にも!)の製品に組み込まれているのだ。
AMDのグラフィックボード、ルネサス エレクトロニクスの「GR(Gadget Renesas)ボード」などにも中国チップは組み合わされている。Amazonのような世界的なメーカーもしかりだ。モーター制御、タッチパネル制御など、いわゆる末端のコントローラーも徐々に中国メーカーの半導体の採用が増えている。これらの実績は、周辺回路を取り込んだ次世代チップにつながり、やがては米中貿易摩擦などの圧力に屈しない、中国独自のチップだけでさまざまな機器が作られていく未来を彷彿(ほうふつ)とさせる。
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