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貿易摩擦に屈しない、中国半導体技術の“体力”製品分解で探るアジアの新トレンド(31)(3/3 ページ)

トライ&エラーを繰り返し、着実に実績をつけている中国の半導体技術。こうした実績はやがて、貿易摩擦などの圧力に屈せず、自国の半導体で多様な機器を作ることができる“体力”へとつながっていくのではないだろうか。

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トライ&エラーで果敢にチャレンジする中国

 出来のよしあしで語ることも重要だが、トライ&エラーの中でノウハウや経験が蓄積され、大いなるチャレンジが繰り広げられていることの方が極めて重要だと考える。中国では現在も、続々と新しいモノ、半導体が生み出されている現実があるからだ。

 年間150製品ほどを中国から輸入し、分解している弊社では、分解のたびに新たなチップや、見たことも聞いたこともないメーカーに出会う。中国は、まさにダイナミックに動いていることを実感する瞬間だ(弊社では定期的にスタッフを中国に派遣し、視察などを行っている)。

 図4はロボット用などに販売されるLiDARの分解の様子である。LiDARやレーダーなど空間認識向け機器も中国から続々と生み出され、しかも安価で販売されている。内部にはモーター、センサー、制御チップ、電源系ICなどが組み込まれていて、主に欧州チップ、中国チップで構成されている。


図4:LIDARにも多数の中国半導体が採用されている (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 欧州は、Philips(半導体事業を分社化したものがNXP Semiconductors)やSiemens(ここから分離、独立したのがInfineon Technologies)の時代から中国に深く入り込んでいる。中国と欧州のチップを組み合わせで作られる製品が、今なお多いのは、そうした長い歴史が背景にあるのだろう。中国製品は新分野を中心に躍進を続けているが、欧州メーカーと共存する部分や、欧州の老舗ブランドを生かす術(すべ)も熟知しているように思われる。

 欧州チップには何といってもブランド力が備わっている。中国メーカーは、製品の宣伝などに欧州半導体メーカー名を記載し、老舗ブランド名を生かすことで製品価値を高めるということも、きちんと行っているからだ。

 デジタルや、コモディティのアナログには中国製を使う。そして、テイスト(音質や感度)の部分では欧州を組み合わせることで、共存も抜かりなく進めているのである。

執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年に渡る半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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