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最大の半導体製造装置市場となった「ドライエッチング」とは湯之上隆のナノフォーカス(1) ドライエッチング技術のイノベーション史(1)(3/3 ページ)

半導体製造において欠かせないドライエッチングプロセス。ドライエッチング技術は、どのような技術改良を重ねてきたのだろうか。本連載では6回にわたり、ドライエッチング技術で起こったイノベーションの歴史をたどる。

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RIEの原理

 絶縁膜の一種であるSiO2の異方性加工を行う場合を例にして、RIEの原理を説明する(図5)。


図5:リアクティブ・イオン・エッチングの原理(クリックで拡大)

 まず、CF4やC4F8などのCF系ガスとArガスによる混合プラズマを発生させる。プラズマ中では、電子衝突により、CFXの反応種(ラジカル)と、ArイオンやCFXイオンが生成されている(X=1〜3)。このうち、ラジカルが、拡散により、SiO2の表面に到達し、付着する。

 次に、シリコンウエハーにバイアスを印加して、ArイオンおよびCFXイオンをウエハーに垂直に引き込む。イオンがSiO2表面に衝突すると、その衝撃でSiO2の分子結合が切れるとともに、運動エネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、ホットスポットと呼ばれる局所的な高温状態が生じる。その熱エネルギーが化学反応を促進する。この一連の現象は、イオンアシスト反応と呼ばれている。

 その結果、SiF4やCOなど、蒸気圧の高い反応生成物が形成され、これが揮発することによって、エッチング反応が進む。その際、ArイオンおよびCFXイオンの入射方向にエッチングが進むため、異方性加工が実現する。

 以上がRIEの原理である。次回(連載第2回)では、プラズマを用いたドライエッチングを発明したのは誰か、それを発展させてRIEを発明したのは誰かについて詳述する。

 少しだけ予告をしておくと、RIEという言葉を生み出したのは、IBMであるが、RIEの概念を世界で初めて発明したのはIBMではなく、NEC傘下の日電バリアン(現:キヤノンアネルバ)である。

 その日電バリアンは、リアクティブ・イオン・スパッタリング(RIS)と名付けたが、その名称は定着せず、後から発明したIBMの名称RIEが普及した。その事情についても詳述したい。

次回に続く

⇒連載「湯之上隆のナノフォーカス」記事一覧

筆者プロフィール

湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長

1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。

有門経敏(ありかど つねとし)Tech Trend Analysis代表

 1951年生まれ。福岡県出身。大阪大学大学院博士課程(応用化学専攻)を修了後、(株)東芝入社。2001年、(株)半導体先端テクノロジーズ出向を経て、2004年、東京エレクトロン(株)入社。技術マーケテイングと開発企画を担当。現在、Tech Trend Analysisの代表として産業や技術動向の分析を行っている。


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