EV開発の“静かな”戦い、日中の学生が切磋琢磨:学生フォーミュラ2018レポート(1/2 ページ)
「第16回 全日本 学生フォーミュラ大会」(以下、学生フォーミュラ)が2018年9月4〜8日にかけて開催された。今回の第16回大会では、EVクラスに日本10チーム、海外7チームの計17チームがエントリー。EVクラス1位の座を懸け、名古屋大学とTongji Universityがし烈な争いを繰り広げていた。
「第16回 全日本 学生フォーミュラ大会」(以下、学生フォーミュラ)が2018年9月4〜8日にかけて開催された。
自動車技術会が主催するこのイベントは、18歳以上の学生が自らの手でフォーミュラカーをコンセプト構想から設計、部品製作、最終組み立てに至るまで独自に開発し、マシンの走行性能を含めた技術力(動的審査)、そしてそのマシンを売り出すという仮定のもとで考案したビジネスロジック/プレゼンテーションの完成度(静的審査)を競い合う(関連記事:学生フォーミュラ2018プレビュー「EV開発から学生は何を得るか――知識、経験、そして」)
学生フォーミュラでは、ICV(内燃機関)クラスと第11回大会(2013年)から追加されたEV(電気自動車)クラスの2クラス制をとる。EVクラスは、バッテリー供給電力80kW未満で最大公称作動電圧が600Vdc以下、エネルギー回生が認められておりモーター搭載数も制約なしと、自由度の高いレギュレーションが設定されている。
今回の第16回大会では、EVクラスに日本10チーム、海外7チームの計17チームがエントリー。車両未完成による辞退や車検不合格などにより、実際に車両の運動性能を競い合う「動的審査」に進めたEVクラスのチームは、名古屋大学、豊橋技術科学大学、一関工業高等専門学校/岩手大学の合同チーム、神奈川大学、Tongji University(同済大学、中国)、National Tsing Hua University(国立清華大学、台湾)など、計10チームとなった。
第16回大会では、EVクラス1位の座を懸けて名古屋大学とTongji Universityがし烈な争いを繰り広げていた。
名古屋大学とTongji Universityのマシンスペックを比較
名古屋大学とTongji University、両大学のマシンは設計思想にそれぞれ個性が現れていた。車両諸元より読み取れる、両大学のマシンスペックを数値で比較する。
まず車体構造について、名古屋大学は鋼管のスペースフレームとなっているが、Tongji Universityでは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のモノコックを採用する。その違いもあり、名古屋大学は車両総重量が300kg(前後重量配分42:58)であるのに対して、Tongji Universityは240kg(前後重量配分48:52)と60kgほど軽量だ。
駆動系ではどちらも永久磁石式同期モーターを搭載するが、駆動方式が両大学で異なる。名古屋大学は大型モーター1基をミッドシップレイアウトで搭載し、後輪を駆動させるのに対し、Tongji Universityはインホイールモーター4基による4輪駆動だ。駆動系の制御機能として、トラクションコントロールシステムと回生ブレーキを両大学とも備えており、加えてTongji Universityはインホイールモーターを生かしたトルクベクタリング制御を独自開発したという。
また、名古屋大学は容量6.2kWhのリチウムポリマー(Li-Po)電池より最大電圧378V、Tongji Universityは容量6.8kWhのリチウムイオン(Li-ion)電池より最大電圧588Vで電力供給を行っている。
サスペンション形式は、どちらも前後輪で不等長Aアームのダブルウィッシュボーンを採用。Tongji Universityは前後輪をプッシュロッド機構としているのに対して、名古屋大学は前輪をプルロッド、後輪をプッシュロッドとしている。
学校名 | モデル名 | 車体構造 | 車両総重量(前後重量配分) | モーター(最高出力、最大トルク) | 電池(容量、最大電圧) |
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名古屋大学 | FEM-15 | 鋼管スペースフレーム | 300kg(42:58) | 永久磁石式同期モーター(80kW、254Nm) | Li-Po(6.2kWh、378V) |
Tongji University | DRe18 | CFRPモノコック | 240kg(48:52) | 永久磁石式同期モーター(20kW、40Nm)×4個 | Li-ion(6.8kWh、588V) |
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