オープンソースハードも商用ライセンスが必要:Arduinoの共同創設者が主張
Arduinoの共同設立者でオープンソースハードウェアの先駆者として知られるMassimo Banzi氏は、オープンソースハードウェアの商用ライセンスの提供に向けたアイデアを温めている。
Arduinoの共同設立者でオープンソースハードウェアの先駆者として知られるMassimo Banzi氏は、オープンソースハードウェアの商用ライセンスの提供に向けたアイデアを温めている。
Banzi氏は、オープンソースハードウェアの商用ライセンスの取り決めを策定する必要性を訴えている。同氏は、ArduinoのユーザーがArduinoの新しいFPGAボードで作成したIP(Intellectual Property)を販売できるオンラインストアのアイデアについて説明した。
Arduinoのプロトタイプボードは、大成功を収めた初期のオープンソースハードウェアの一つであり、オープンソースハードウェアという概念を広めるきっかけにもなった。しかしその裏で同社は、Arduinoよりも大手のライバル企業がArduinoのオープンソースの設計を使い、自社の商用製品として“Arduinoの廉価版”を販売するといった、搾取の被害を受けてきた。
犠牲者はArduinoだけではない。Banzi氏は、「小規模なオープンソースハードウェア設計企業リリースした設計を使って、大手企業が安価な製品を作った事例は複数ある。大手企業は、設計企業の労力に思いをはせることなく、利用するだけ利用する」と主張する。
ライセンスを「非商用」と「商用」で分けるべき
Banzi氏は、「個人的には、ハードウェアは非商用ライセンスでリリースされるべきだと考えている。ただし、市場に投入する製品を作る場合は、商用利用に向けたライセンス供与を受けたいと、われわれのところに相談しに来てくれてもよいのではないか。そのために、簡単に商用ライセンスを提供できるシステムの確立が望まれる」と続けた。
Arduinoは2003年の創業以来、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を利用している。Banzi氏は、「CCライセンス以降、たくさんの新しいライセンスモデルが登場し、オープンソースハードウェアをライセンス条件に応じて提供するための扉が開かれた」と語る。
Banzi氏は、「設計者がユーザーとどのように関わり、どうやってユーザーに設計者への配慮を促すかについて幅広い議論が必要だ」と述べている。
Banzi氏の発言は、Arduino初となるFPGAを搭載したボード「Vidor 4000」に関して述べたものだ。Vidor 4000は、FPGAで一般的に使用される難解なハードウェア記述言語を使わずに、IntelのFPGA「Cyclone 10」上にArduinoライブラリをダウンロードしてIPを実行することができる。
Vidor 4000では、JTAG RPCプロトコルを使用して、オンボードの「Arm Cortex-M0+」コントローラーをFPGAに接続している。Arduinoは、640x480ビデオの実行やHDMIリンク経由の送信、QRコードの読み取りなど、さまざまなIPブロックのライブラリをサポートしている。
同社は現在、ユーザーがIPブロックをボードにドラッグアンドドロップし、コンパイルできるような、クラウドベースのツールの開発に取り組んでいる。Vidor 4000を使って設計したユーザーが、他のユーザーも設計情報を入手できるようにすることも考えているという。
Banzi氏は、「こうした情報は、オープンソースにするものもあれば、しないものもある。ユーザーが、実際に販売する最終製品を作りたい場合、オープンソースのソリューションでは、求められる品質を満たせないこともある」と述べた。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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