LEDへ地道に取り組むオスラム、次世代の光技術を聞く:植物工場にビジネスチャンスを見る(3/3 ページ)
可視光LEDや赤外LED、半導体レーザーなどオプトエレクトロニクス製品の専門メーカーであるOSRAM Opto Semiconductors。同社の一般照明事業でCEO(最高経営責任者)を務めるEmmanuel Dieppedalle氏に、同社製品の最新動向や今後の研究開発方針、そしてビジネスの展望を聞いた。
次世代オプトエレクトロニクスのけん引役はQDとマイクロLED
EETJ 次世代のオプトエレクトロニクスをけん引するイノベーションを教えてください。
Dieppedalle氏 次世代のオプトエレクトロニクスに求められるものは、色の質を向上させることだ。これを実現するキーテクノロジーは先ほども紹介したQDだ。演色性を向上させつつも、変換効率を維持できるQDは光源にとって大きな革新となる。
また、昨今において注目を集める「ヒューマンセントリックライティング」は、人が心地よく感じる光をどのように創造するかという概念だ。ブルーライトは人に対して好ましくないといわれているが、LEDは青色がベースで作られている製品だ。ブルーライトを抑制しつつ、どのようにして心地よい光を提供できるか。この点でも研究を進めていく。
また、もう1つのイノベーションはマイクロピクセレーテッドLEDだ。この技術は、1つのLEDダイを微細な1024個のセルに分割してピクセルと定義し、ピクセルごとに制御可能なLEDだ。ピクセルサイズは115μmでそれぞれが3ルーメン発光し、チップ合計で3000ルーメン程度の光を発する。
このマイクロピクセレーテッドLEDをダウンライトに組み込むと、モーターなど機械的な制御を必要とせず、光源だけで光を移動させることが可能となる。この技術は駐車場での案内表示や一般店での広告表示など、さまざまな応用が考えられる。普段は照明でありながら、必要な場合に情報を投影できるデバイスもこの技術で開発できるため、顧客が開発する照明機器の付加価値創出と差別化に貢献できる。
直近で登場する製品ではなく、現在プロトタイプを開発し、量産は数年後を予定している。顧客へ紹介できる準備を進めているところだ。
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