オスラム、白色LEDで“10度ビニング”を推進へ:「これまでにない色一貫性を」
オスラム オプトセミコンダクターズは2016年8月3日、白色LEDで新たに提唱する「10度ビニングコンセプト」に関するセミナーを開催した。同社は、「10度ビニングを採用することで、色のばらつきを抑え、人間の感覚により近い表色系を実現できる」と語る。
「10度ビニングコンセプト」
オスラム オプトセミコンダクターズは(以下、オスラム)2016年8月3日、白色LEDで新たに提唱する「10度ビニングコンセプト」に関するセミナーを開催した。
ビニングとは、LEDの特性に応じて各素子を分類することである。LEDでは、CIE1931 2度 xy表色系が世界的に採用されている*)。しかし、「CIE1931 2度では、人間の知覚的色差を適切に分類することは不可能。10度ビニングを採用することで、色のばらつきを抑え、人間の感覚により近い表色系を実現できる」(オスラム)と語る。
*)CIE:国際照明委員会
オスラムによると、CIE1931 2度表色系では、色度座標で同じ2つのLEDが、明らかに異なる白色の色合いを示す可能性がある。2度から10度に視野が移行することで、色知覚が一般照明アプリケーションに大幅に近づく。
「10度ビニング」を再現したデモ。1番下の円が2度ビニング、真ん中の円が10度ビニングの分類を表している。50cm離れた距離からの2度の表色系は、直径17mmの視野しかないという。多くのアプリケーションでは、10度以上の視野(直径約90mm相当)のため、色知覚に歪みが生じることがある (クリックで拡大)
そこで、オスラムは現行のCIE1931 2度 xy表色系を、国際照明員会が2015年に開発したCIE2015 10度 u´v´で補完し、「10度ビニング」として実用化した。2016年3月には、10度ビニングを採用した白色LED「Soleriq S13」を発表している。これにより、色のばらつきを抑制することが容易で、単一の白色CoB(Chip On Board)LEDを使用するスポットライトやダウンライトで、均一な照明を実現するのに最適とした。
なお、LEDでは狭いビニングで知覚色差を減少させるため、5SDCMから3SDCM、1SDCM(マクアダム楕円)といったANSI規格範囲が進行してきた。同社は「それでも、CIE1931 2度 xy表色系の欠点により、視覚的な色差は解消できない」と語る。
新LEDチップ工場をマレーシアに竣工(しゅんこう)
オスラムの2015年売り上げは、約56億ユーロ(約6000億円)である。そのうち、LED半導体を扱うオプトセミコンダクタ―ズは、約1500億円を占めるという。2016年7月には、ランプ事業を分社化し、レドバンスが誕生。しかし、中国LED照明の木林森と、レドバンスを約4億ユーロ(約460億円)で買収することで合意している。買収完了は2017年9月の予定だ。オスラムは、売却の理由を「事業の選択と集中による結果」と語る。
今後は、照明市場における半導体ベースの技術移行によって創出される成長機会に向けた投資を行うとする。2020年までに約30億ユーロ(約3400億円)を投資する。約20億ユーロを研究開発に、残りの10億ユーロでマレーシアにLEDチップ工場を建設する計画だ。同社によれば、この新工場は、世界最大規模の6インチウエハー製造施設になるという。オスラムは、この成長機会に向けた投資を「ダイヤモンドイニシアチブ」と呼んだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 幅広い製品群と新工場建設で、LED事業を拡大
オスラム オプトセミコンダクターズは照明用LED事業を一段と強化していく。LEDチップの新工場をマレーシアに建設するなど、製造能力の強化にも乗り出す。 - 可視光全域の波長をカバー、世界初の標準LED
産業技術総合研究所の中澤由莉研究員らは、日亜化学工業と共同で、可視光全域で十分な光強度を持つ標準LEDを開発した。 - 電気を通すラップの開発に成功
産業技術総合研究所(産総研)は2016年1月、電気を通す透明ラップフィルムを開発したと発表した。生鮮食品用の包装フィルムの他、曲面状のものにセンサーを実装できるという。 - 照明向けLED製品、高演色性と広指向角を実現
オスラム オプトセミコンダクターズは、「第8回ライト テック EXPO」で、照明システム向けを中心に、高い演色性や広い指向角を実現したLED製品をデモ展示した。 - 太陽光の再現で外的ストレスを減少するLED照明
キャプテンインダストリーズは、2016年1月13〜15日に東京ビッグサイトで開催された「ライティングジャパン」に、ドイツのWaldmann(バルトマン)のLEDフロアスタンドライト「LAVIGO(ラヴィゴ)」を展示した。蛍光灯と比較して、大幅にストレスを減少するという。 - 低消費電力と精度の向上を実現した光学式センサー
オスラム オプトセミコンダクターズは2015年8月、脈拍数と血中酸素濃度を測定する光学式センサーの製品ラインアップを拡充したと発表した。健康レベルをモニタリングするスマートウォッチやフィットネス用のアームバンドなどのウェアラブル機器に適しているという。