メモリセルの制御ゲートをワード線に引き出すステアケース:福田昭のストレージ通信(120) 3D NANDのスケーリング(8)(2/2 ページ)
今回は、「ステアケース(Staircase)のパターン形成」技術について解説する。特に注目したいのが、ステアケースのパターン形成を短時間で行える「トリム」技術だ。
ステアケースのパターンを短時間に形成する「トリム」技術
ステアケースのパターン形成工程は、既存の製造技術だと非常に時間がかかる。リソグラフィとエッチングによって階段状のパターンを、1段ずつ形成するからだ。例えば32ペアのペア薄膜だと、リソグラフィとエッチングのサイクルを、32回も繰り返すことになる。このことは、3D NANDフラッシュ製造の生産性を悪化させる。
そこで考案されたのが「トリム(Trim)」と呼ばれる、リソグラフィの工程を省く技術である。最初にリソグラフィによってレジストのパターンを形成し、エッチングによってマルチペア薄膜を1段分だけ、削る。従来技術ではここでレジストを剥離する。しかし「トリム」技術ではレジストを残し、エッチングによってレジストの側壁を削って(トリミング)階段の次の段に相当する部分の表面を露出させる。そして再び、レジストを利用してエッチングによってマルチペア薄膜を1段分だけ、削る。これを繰り返す。
同じ「エッチング」だが、レジストのトリミング用エッチングとマルチペア薄膜用エッチングは、厳密には異なる技術である。重要なのは、マルチチャンバーのエッチング装置では、これらの異なるエッチングを1台の装置で実施できることだ。リソグラフィは露光装置を使うので、従来技術ではシリコンウエハーを露光装置とエッチング装置の間で搬送し、各装置へのウエハー搬入と各装置からのウエハー搬出を繰り返さなければならない。これに対して「トリム」技術を使うと、エッチングの装置内だけでステアケースのパターン形成が完結する。このため、生産性が大幅に向上する。
ただし「トリム技術」を駆使しても、32ペアや48ペアといった多層構造に対して一気に階段状のパターンを形成できるわけではない。トリミングでレジストの側壁を削るときに、レジストの厚みがわずかに薄くなる。このため、通常は4回〜8回といったトリミングによってレジストがあまりに薄くなり、パターン形成には使えなくなってしまう。そこで、再びレジストを塗布してパターンを形成するためのリソグラフィ工程が入る。それでも、全てのステップでリソグラフィが入ることに比べると、生産性が大幅に高まるのは確かである。
「トリム(Trim)」技術の概要。上は従来技術によるステアケースのパターン形成。下は「トリム」を利用したパターン形成の手順。4段分のステアケースを形成後に、レジストを剥離した場合。出典:Applied Materials(クリックで拡大)
「トリム(Trim)」技術の概要。右上はステアケースの断面構造。紫色の層が制御ゲート層。右下は、「トリム」技術を利用したステアケースの形成手順。レジストの側壁を削る工程と、ペア薄膜を削る工程を繰り返す。出典:Lam Research(クリックで拡大)
(次回へ続く)
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