勢力図広げるLoRaWAN、日本では防災で高いニーズ:巨大なエコシステムが強み(2/2 ページ)
LoRa Allianceは2018年10月25日、東京都内で記者説明会を開催し、LoRaWANの現状や日本での採用事例、実証実験事例を紹介した。日本では、防災での活用が始まっている。
日本では防災向けに高いニーズ
日本では、どういった採用事例があるのか。LPWA(主に免許不要の周波数帯)対応機器などを提供するM2Bコミュニケーションズでストラテジー・マネージャーを務める都竹章浩氏は、同社が手掛ける事例をいくつか紹介した。
都竹氏によれば、LoRaWANは防災向けでのニーズが高いという。例えば水位センサーによる河川の水位のモニタリングや、センサーを搭載した杭を使っての土砂崩れのモニタリングといった具合だ。M2Bコミュニケーションズの親会社であるエイビットは、土砂災害の発生を未然に検知する「スマくい(=スマート杭)」というシステムを提供している。杭には、杭の傾きを検知するために、3軸加速度センサーを搭載したモジュールやバッテリーが組み込まれていて、LoRaWANを介して定期的にデータが送信される。杭が傾き始めたら、地盤が緩んで土砂崩れの危険性があるということが分かる。
また、東京都八王子市では、IoTを使って河川や用水路などの水害対策を行うプロジェクトが進められていて、M2Bコミュニケーションズとエイビットは、このプロジェクトにも参加している。「従来型の水位計は大型で、設置コストもメンテナンス費用も高い。われわれが提供するLoRaWAN対応の水位センサーは、従来型に比べると小型で軽いので、設置コストやメンテナンスコストを大幅に低減できる」(都竹氏)
ダムの工事現場でも、「スマくい」を使った実証実験が行われている。都竹氏は、こうした実証実験を続けてきて判明したことがあると述べる。河川にしても建設現場にしても、LoRaWAN対応のセンサーを設置したいと思う場所は、インターネットにつながらないケースが多いということだ。圏外なのである。このような場合、M2Bコミュニケーションズは、マイクロサーバを使用し、LoRaWANの閉域ネットワークとして使える環境を構築している。同社は現在、ネットワークサーバを実装したゲートウェイも開発中だという。
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