検索
インタビュー

「e-AI」で破壊的なイノベーションを、ルネサス 横田氏electronica 2018(1/2 ページ)

ドイツ・ミュンヘンで開催中の「electronica 2018」に出展しているルネサス エレクトロニクスの展示内容は、車載製品ではなく、産業機器向けの製品が中心となっている。同社執行役員常務兼インダストリアルソリューション事業本部長を務める横田善和氏に、その狙いなどを聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 2018年11月13〜16日にかけて、ドイツ・ミュンヘンで開催中の「electronica 2018」。出展しているルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)の展示内容は、前回の「electronica 2016」で中核テーマだった車載向けの製品ではなく、産業機器向けの製品が中心となっている。

 展示の中核を成しているのは、エンドポイントにAI(人工知能)を組み込む「e-AI(embedded-AI)」と、ルネサスが独自に研究開発を進めてきたプロセス技術「SOTB(Silicon On Thin Buried Oxide)」だ。SOTBについては、electronicaの会期中となる11月14日(現地時間)に、SOTBを採用した初めての製品となる、エナジーハーベストで駆動できるコントローラー「R7F0E」を発表している(関連記事:環境発電で動作するコントローラー、ルネサスがSOTBを初適用)。ルネサスで執行役員常務兼インダストリアルソリューション事業本部長を務める横田善和氏に、今回の展示の狙いなどを聞いた。


「electronica 2018」のルネサスのブース(クリックで拡大)

「全く新しい製品カテゴリー」

EE Times Japan 今回のelectronicaでの一番のメッセージを教えてください。

横田善和氏 展示の核となるのは1つ目がe-AI、2つ目がe-AIに向けた「DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)*)」、そして3つ目がSOTBだ。この3つを柱として、われわれの“ユニークな技術”として紹介するというのが最も大きな狙いである。

*)DRP:ルネサスが開発したプロセッサ技術で、1クロックごとに演算回路を動的に変更できる。

 特に、今回発表したR7F0Eは、「より低消費電力化したマイコン」や「FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)のローエンド版」という位置付けではなく、全く新しいものを作りたいという思いから生まれた製品となる。当社にはローパワーのマイコン「RL78」などのファミリーがあるが、そういった既存の低消費電力マイコンではできないソリューションを今回提供するというのが、electronicaでの目的だ。

EETJ では、R7F0Eというのは、“ローパワーマイコン”ではなく、“全く新しい製品カテゴリー”として位置付けたいということでしょうか。


横田善和氏

横田氏 その通りだ。AIについても、エンドポイントにAIを組み込むという意味で、IT(情報技術)のAI向けにプロセッサを提供しているIntelやNVIDIAとは違う位置付けで、定義している。

 われわれが勝負するフィールドはデータセンターではなく、あくまで組み込み分野だ。e-AI向けプロセッサで目指す価格帯も、数百米ドルするようなチップではなく10米ドルや20米ドルである。そうなれば、一家に1台、もしくは1人1台(家庭用)ロボットを持つといったことが、近い将来可能になると考えている。

 もちろん、演算能力の点では、e-AI向けのプロセッサが、現時点ではIntelのCPUやNVIDIAのGPUにかなわないことは十分承知している。だが、いずれはそん色のないところまで性能を上げていくつもりだ。そして、消費電力は圧倒的に低いという点を訴求していく。

 ことし(2018年)の初頭に、e-AIを強化すべく、プロセッサにDRPを取り込んで、18カ月ごとに10倍ずつ性能を向上していくと発表した(関連記事:ルネサス MCU/MPUのAI処理性能を今後3年で1000倍に)。2018年10月に発表したプロセッサ「RZ/A2M」は、DRPを搭載したもので、(従来の「RZ/A1」に比べて)画像処理性能が10倍に向上している。“次の10倍(100倍)”も、2019年後半の発表に向けて開発は順調に進んでいる。さらに10倍(1000倍)となる製品も、2021年に発表するという計画に沿って取り組みを進めている。

EETJ IntelやNVIDIAのプロセッサの演算能力とそん色のないレベルまで引き上げるとのことでしたが、e-AIにも、ITのAIと同じような性能が必要なのでしょうか。

横田氏 現在のe-AIは、エンドポイントで推論を行うことを目的にしているが、性能が1000倍となった時には、ある程度の学習もできるようになってくると考えている。すると、家庭用ロボットが、ユーザーの好みに合わせて毎日進化していく、といった世界が実現する可能性もある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る