Intelの創業4年目(前編)、半導体メモリのトップベンダーに成長:福田昭のデバイス通信(171) Intelの「始まり」を振り返る(4)(2/2 ページ)
Intelの創業4年目(1971年)は、「飛躍の年」となった。不揮発性メモリとマイクロプロセッサという、2つの画期的な製品を開発したのだ。前編では、この2製品と、本社社屋の移転について紹介する。
DRAMの大成功と、自社所有建屋への移転
販売では、前年(1970年)10月に開発した世界初のダイナミックRAM(DRAM)「1103」が大成功を収めた。「1103」は業界標準メモリの地位を確立し、半導体メモリ市場でIntelのシェアを30%〜50%に押し上げる原動力になったと、1971年の年次報告書では高らかにうたっている。2018年の現代に置き換えると、半導体メモリ市場におけるSamsung Electronicsのような地位を、Intelは獲得したことになるのだろうか。もっとも市場規模そのものは非常に小さく、半導体メモリおよびIntelの社会的影響は現代とは比較にならない。
生産と運営では、本社の移転と自社所有工場の稼働という大きな出来事があった。Intelはシリコンバレー地域の一角、カリフォルニア州マウンテンビューで創業した。本社オフィス建屋と工場建屋、それから半導体製造装置は全てリース物件である。Intelはマウンテンビューからおよそ10kmほど離れたサンタクララで土地を購入し、本社ビルと工場を建設する。1971年に本社ビルと工場は竣工し、本社オフィスはマウンテンビューからサンタクララへと移転した。
マウンテンビューの生産工場はそのまま残され、稼働を続けた。サンタクララの生産工場は、Intelにとっては生産の移転ではなく、生産を増強する手段だった。新工場の稼働によって半導体生産のスループットは前年の3.5倍と大幅に向上した。
翌年(1972年)への明るい展望
1971年の年次報告書(アニュアルレポート)は冒頭の本文を、翌年(1972年)への明るい展望で締めくくっている。製品開発では、nチャンネルのMOS FET技術による新製品を市場に投入する。現行のpチャンネルMOS FETデバイスに比べて性能が向上するとともに、電源電圧が下がり、消費電力が減る。また記憶容量が4,096ビット(4Kビット)の大容量メモリを開発する計画である。
それから1971年に新設したメモリボードの開発・販売部門が本格的に活動し始める。メモリモジュールとメモリサブシステムの新製品をいくつか投入するという。
そして1972年は、売り上げが1971年に比べて大幅に増加すると述べている。といっても1971年の業績をまだご説明していないので、やや分かりにくいかもしれない。1971年は業績でも大きな変化があった。詳しくは後編でご紹介したい。
(後編に続く)
創業1年目 | 研究開発主体で売り上げは「ゼロ」 |
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創業2年目 | 初めての製品売り上げを計上するも赤字は拡大 |
創業3年目 | 売り上げが前年の11倍に急増して赤字が縮小 |
創業4年目 | (前編)半導体メモリのトップベンダーに成長 |
(後編)最終損益が黒字に転換 | |
創業5年目 | (前編)収入が前年の2.5倍に、初めての営業黒字を計上 |
(後編)腕時計メーカーになったIntel | |
創業6年目 | クリーンルームに防塵衣がまだなかった頃 |
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