“余計なもの”って何? 「Mate 20 Pro」の疑惑を晴らす:製品分解で探るアジアの新トレンド(34)(2/3 ページ)
Huaweiの2018年におけるフラグシップ機「Mate 20 Pro」。この機種には、“余計なもの”が搭載されているとのうわさもある。本当にそうなのだろうか。いつものように分解し、徹底的に検証してみた。
2層基板構造になっている
図2は、背面のカバーを取り外した様子(左)とメインの処理基板を取り外した状態である。内部は他のスマートフォンと同じく、カメラ部、処理基板、電池、スピーカーなどを含めたインタフェース部(USB Type-C)、ディスプレイでできている。さらに非接触充電を行うための薄いコイルが存在する。部品としては以上だ。
一つずつ取り外し、搭載されているチップと部品をチェックする。基板上の機能チップは全て確認してBOM表にもまとめていく。通常、スマートフォン内部には2つの基板が搭載されている。信号処理と通信処理を行うメイン基板と、USBやヘッドフォン端子(ここにはマイクロフォンなども搭載される)を持つサブ基板だ。
AppleやSamsungのスマートフォンも同じ構造になっている。
次に、基板上の全てのチップを確認する。小さなチップまで合わせると30個以上のチップが並ぶので、判定には時間がかかる。素性が分からないものは、チップ開封して顕微鏡でチップ上のデータを読み取り、判断することになる。
先ほど、「通常のスマートフォンには2つの基板が搭載されている」と書いたが、Mate 20 Proにはもう1枚基板が搭載されている。図2の右の図でクローズアップした部分である。通常のメイン基板を取り外すと、その下にもう一枚基板が存在する。
この手の2層基板構造は、ほとんど存在しない(Appleの「iPhone X/XS/XS Max」は2層基板)。
結論から言えば、その2枚目の基板にはワイヤレス給電用のバッテリーチャージャーチップやDC-DCコンバーター、オペアンプなどが並んでいるだけであった。しかも米Texas Instruments(TI)、米IDT(ルネサス エレクトロニクスが買収を発表)など米国の老舗メーカーのチップしか並んでいない。つまり、ワイヤレス給電と電源関係の基板ということになる。詳細は弊社有償レポートで確認されたい。
図3は、メイン基板の様子である。メイン基板は実際には金属シールドで覆われており、シールドを取り除いた状態が図3の左側だ。表裏にさまざまなチップが配置されている。大きく、センサー部、電源部、通信部と信号処理部に分かれている。プロセッサはHuawei傘下の半導体メーカーHiSiliconの最新プロセッサ「Kirin 980」が採用されている。Kirin 980は、現時点で最先端プロセスの7nmが活用されるモンスタープロセッサだ。最新のArm CPU/GPUが採用され、さらにLTEのCat 21に対応する1.4Gビット/秒(bps)の高速データ通信プロセッサも搭載する。
さらに、2コアのNeural Processing Unitが採用され、AI処理も行っている。AI処理を用いてのカメラ処理や指紋認証などは前機種P20 Proや「Honor 10」でも行っているが、さらに処理性能が向上した。
図3右はディスプレイの裏側だ。ここにも多くのチップやセンサーが埋め込まれている。タッチスクリーンのコントローラーや、指紋センサーと指紋センサーからの値をデジタル化してプロセッサに送るチップなどである。
これらの素性もチェックした。
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