Intelの創業6年目(1973年)、クリーンルームに防塵衣がまだなかった頃:福田昭のデバイス通信(175) Intelの「始まり」を振り返る(8)(2/2 ページ)
Intelの創業6年目となる1973年。この年に関してはなぜか年次報告書が掲載されていないので、業績のみを紹介する。それに加えて、クリーンルームにまつわる驚きのエピソードにも触れたい。
クリーンルームに防塵衣を初めて導入
Intelの公式資料によると、1973年には製造技術面で重要な出来事があった。工場のクリーンルームに、防塵衣が導入されたのだ。Intelはこの防塵衣を「バニースーツ(Bunny Suits)」と呼んだ。1973年に操業を開始したリバモア工場(米国カリフォルニア州)で、バニースーツは初めて導入された。リバモア工場の名称は「Fab3」で、Intelにとって3番目の製造拠点を意味した。
今でこそクリーンルーム内での防塵衣着用は、半導体製造では「常識中の常識」である。人体は塵埃と汚染物の深刻な発生源であり、人体から飛散する全ての物が半導体製造ラインにばらまかれないようにすることが、不良品の発生を防ぐ第一歩だからだ。
ところが1970年前後の当時はそうではなかった。Intelが創業50周年を記念したWebサイトで、バニースーツの導入に関するエピソードを公開している。この資料によると、1968年の創業当初は恐るべきことに、クリーンルームには着衣に関する制限がなかった。従業員は私服で作業にあたっていた。しかも作業員の態度は非常にいいかげんで、拡散炉の熱を保温に利用するために、ピザをクリーンルーム内に持ち込んで拡散炉の上に置いていたことすらあったという。
さすがにそれではまずいと思ったのか、1971年までには上着(スモック)の着用が義務付けられる。しかし頭髪や足、手などは出しっぱなしであり、とても「クリーン」とは呼べない状態だった。
そして1973年にはリバモア工場で、頭髪や足、手などを覆うバニースーツ(防塵衣)の着用が義務付けられるようになった。バニースーツはリバモア工場以外の工場でも徐々に導入され、1980年までには全社の標準仕様となった。
(次回に続く)
創業1年目 | 研究開発主体で売り上げは「ゼロ」 |
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創業2年目 | 初めての製品売り上げを計上するも赤字は拡大 |
創業3年目 | 売り上げが前年の11倍に急増して赤字が縮小 |
創業4年目 | (前編)半導体メモリのトップベンダーに成長 |
(後編)最終損益が黒字に転換 | |
創業5年目 | (前編)収入が前年の2.5倍に、初めての営業黒字を計上 |
(後編)腕時計メーカーになったIntel | |
創業6年目 | クリーンルームに防塵衣がまだなかった頃 |
創業7年目 | 「シリコン・サイクル」の登場 |
DRAMが「特殊なメモリ」だった理由 | |
パソコンを生み出した「8080」プロセッサが登場 | |
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