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見えないところで広がる中国半導体の勢力図製品分解で探るアジアの新トレンド(35)(1/2 ページ)

米中貿易摩擦が激しさを増す中、ZTEやHuaweiを対象とした規制などのニュース(多くは、5G(第5世代移動通信)に関しての覇権争いに関するもの)が、毎日のようにメディアを賑わせている。だが、それとは別に、見えないところで中国製半導体の広がりが明確になっている。

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通信世代が進むにつれて、チップ採用比率が低下した日本

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 米中貿易摩擦が激しさを増す中、ZTEやHuaweiを対象とした規制などのニュース(多くは、5G(第5世代移動通信)に関しての覇権争いに関するもの)が、毎日のようにメディアを賑わせている。だが、それとは別に、見えないところで中国製半導体の広がりが明確になっている。

 弊社では「2000年代前半まで」「2010年代前半まで」「2010年代半ばから現在」と3つのカテゴリーに分け、リサイクルショップやネットなどを通じて古い携帯電話や初期のスマートフォンを続々と買い集めている。もちろん、骨董やコレクションとして集めているわけではない。入手できたものは片っ端から分解し、半導体の国籍、機能、組み合わせなどをデータ化しているのだ。

 これまでの分解調査によって、日本製半導体の採用比率は、2004年までの携帯電話で70〜90%、2005年から2011年では20〜50%、2012年以降は0〜10%ということが分かっている。今後は、さらにサンプルを増やして、報告する予定だ。

 2000年初頭までの2G期には日本独自の通信方式PDC(Personal Digital Cellular)などを用いた端末が多く、日本製半導体が多くを占めていた。2000年半ばに普及した3GではQualcommも一定のシェアを持っていたが、日本製の3Gチップも多数存在した。そのため採用率はまだまだ5割程度を維持できていた。ところが、2011年以降に拡大したスマートフォンは4G通信をメインとしており、LTEモデムチップを持たない日本製半導体は、上記のように採用ゼロに近づいた。

 2G、3G、4Gと進化するごとにシェア(存在感)を確実に落としてきたわけだ。これを感覚的に分かっている人は日本にも大勢いる。しかし何百台もの新旧端末を分解して、データとして明確にしようというのが、現在弊社が取り組んでいるプロジェクトの一つである。

強固な足場を固めた中国

 なぜこんなプロジェクトをやっているのかというと、間もなくやってくる5G時代での変化を見据えてのことだ。5G通信のチップを制する国や企業が、次の10年の基幹を担う可能性が高い。そのためには2G、3G、4Gの変化を、あらためてデータ化しておきたいと考えたのだ。

 2G時代、最も使われた通信チップが米Texas Insrtuments(TI)のMADプロセッサである。Nokiaのほぼ全機種に使われた。オランダPhilipsやドイツInfineon Technologiesも大きなシェア実績を持っていた。それが今では撤退もしくは売却を繰り返して、この分野のトップランナーはQualcommやMediaTek、中国メーカーへと変わっている。5G通信でも劇的な明暗差が出てくるであろうことは、容易に想像がつく。

 2G、3G、4G、5Gと進化のたびに採用率を下げる日本の本質的な問題点は既に明らかになっている(プラットフォーム、チップセットの遅れなどが挙げられるが、詳細はここでは割愛する)。

 しかし、実際の現場が何を考え、このような構造を作ったかは、分解以外からは決して見ることができない。

 分解はある意味考古学にも似ているのかもしれない。2019年は、いよいよ5G通信対応のスマートフォンや端末がさまざまなメーカーから出てくる。それをできる限り分解していく一方で、古い機種についてもデータを蓄積していく予定だ。それらの比較から見えてくるものが、弊社にとっては何らかのテーマになるからだ。われわれは、競争領域と協調領域が各世代でどのように変化したかを見極めることで、より高い現状理解と未来予測ができると確信している。

 2G、3G、4Gと日本製半導体がシェアを落とす中、シェアを上げたり、新たに市場参入したりしているのが中国だ。

 スマートフォンだけではなく多くの分野で中国製半導体はしっかりと地位を築いている。中国製のWi-Fi通信チップやシリアルフラッシュメモリなど多くの日本製品にも組み込まれている。半導体は、通常は分解しないと見えない。製品の中に組み込まれている。中国の半導体がどこにどのように使われているかは、日常生活からはほとんど分からない。

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