見えないところで広がる中国半導体の勢力図:製品分解で探るアジアの新トレンド(35)(2/2 ページ)
米中貿易摩擦が激しさを増す中、ZTEやHuaweiを対象とした規制などのニュース(多くは、5G(第5世代移動通信)に関しての覇権争いに関するもの)が、毎日のようにメディアを賑わせている。だが、それとは別に、見えないところで中国製半導体の広がりが明確になっている。
分解してみて初めて分かる、中国半導体の勢力
前置きが長くなってしまったが、ここからはいつもの分解ネタである。
図1は米Googleが2018年に販売を開始したセキュアキーデバイス「Google Titan Security Key(以下、Titan)」だ。PCなどと連携させることでフィッシングメールをほぼゼロにできるというGoogle推奨のセキュアデバイスである。米国から輸入して分解した。
内部にはセキュアマイコンや通信チップが入っている。欧州製だ。そのわきに暗号化チップが存在する。暗号化チップは中国の国民技術(Nationz Technologies)製で、メモリも中国製。詳細は有償のテカナリエレポートで解析結果を報告している(チップ開封と解析まで行っている)。
図2は、2017年にIntelから発売された機械学習用のUSBスティック「Neural Compute Stick」(右)と2018年に機能向上した「Neural Compute Stick 2」の筐体の様子である。前者は「Made In USA」、後者は「Made In China」と明確に情報が書き込まれている。実際、Intelのニューラルコンピューティングチップを活用するのは中国のDJIを筆頭に中国メーカーが多い。第1世代は米国製だが、第2世代は製造が中国に切り替わっている。
このような事例がIntelだけでなく、他のメーカーでも増えている。
図3は通信関係の例である。LTE-MやNB(Narrow Band)-IoTの通信モジュールや、BluetoothやWi-Fiを組み込んだ通信機器が増え続けている。全てを入手して分解して確認することはできないが、代表的なものはできる限り分解している。
メインの通信チップはQualcommやMediaTek、Nordic Semiconductor、Cypress Semiconductorなど欧米台湾などのチップが多い。しかし、徐々に中国のメモリチップやパワーアンプが組み合わされるケースが増えている。増えているというよりも、明確にポジションを築いているように見える。
最新スマートフォンなどに搭載される高速で大容量なメモリはSamsung Electronics、 Micron Technolgy、SK hynix、東芝メモリが依然としてほとんどだが、LTE-M/NB-IoT対応の機器に標準搭載されているメモリは中国製も多い。
図4は、日本がかつて得意とした分野の一例である。今や市場はほとんど小さいとはいえ愛用者や一定のユーザーが存在するラジオだ。内部は中国製のチューナー、中国製のアンプチップで構成されている。
このように、見えないところに、確実に中国半導体は入り込んでいる。ローテク、ハイテクなどは関係ない。こうした中、2019年には、次世代の本命技術の一つである5Gの商用サービスがいよいよ始まる。弊社も、5G製品は片っ端から分解していく予定だ。
今後も、弊社はローテク、ハイテク、新旧の括りなく、ジャンジャン分解して、見えないものを可視化し、分析していく(幸いなことに、手伝ってくださるメンバーも増えており、データを豊富に持つデータバンクとも連携しています!)
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