パネル市場で実力を伸ばす中国、今後の狙いはOLED:低価格LCDでは独占状態(2/2 ページ)
IHSマークイットでシニアディレクターを務める早瀬宏氏は2019年1月23日に行ったディスプレイ市場動向の説明会で、市場動向や、今後の注目ポイントについて語った。
伸びしろが大きいAMOLED
早瀬氏は、2022年までのFPD市場予測について、「2019年は前年比で若干マイナス。2020年以降にやや戻る。5G(第5世代移動通信)対応スマートフォンがいつ立ち上がるかによって大きく変わる可能性はあるが、4Gスマートフォンについては、『もうしばらく買い替える必要はない』という消費者の意向が色濃く表れている」と説明する。
デバイス別で見ると、AMOLEDが堅調に成長するとみられている。「中国メーカーが今後、ミドルレンジのスマートフォンにも積極的にAMOLEDを採用しようとしていることや、AppleがiPhoneの2020年モデルでは全てAMOLEDに切り替える可能性もあることなどを加味すると、やはりAMOLEDの伸びしろが大きい」(早瀬氏)
今後注目すべきポイントは
早瀬氏は、今後のFPD市場で注目しておきたいポイントも幾つか挙げた。
まずは、米中貿易摩擦だ。早瀬氏は、「ここはもう何とも言えない」と述べる。「Huawei、ZTEといった中国の巨大ブランドが規制対象になっている上に、中国で製造しているiPhoneにも関税がかかってくるような事態になる可能性も否定できない。携帯電話市場は、米中摩擦の影響の直撃を受けて不安定になることが懸念される」(早瀬氏)
AppleのiPhone販売戦略も気になるところだと、早瀬氏は述べる。同氏は、「さまざまなところでいわれているが、とにかく今回の新型iPhoneは価格が高すぎる。新型iPhoneが期待ほど売れず、Appleは年明け早々に、実質的な値下げを行っている。ハイエンド品にAMOLEDを採用し、数は売れなくても高い利益率を維持するという今までのスタンスが通じなくなりつつある。そうした中、ことしの新型iPhoneで、Appleがどのような戦略に出るのか。それによって、中小型FPD市場は変わってくる可能性がある」と続けた。
ディスプレイ、端末ともに主導権を握りつつある中国メーカーが、米中摩擦によってこれらのメーカーが締め出されようとしている状況で、早瀬氏は、「Huaweiのスマートフォンの入荷は今後制限されてくるだろうし、OPPOやVivoのスマートフォンについても同様だ。中国メーカーのRoyoleは折りたためるスマートフォン『FlexPai』を発表したが、これも日本で販売されるかは分からない」と述べる。早瀬氏はこうした状況に懸念を示し、日本のメーカーは、ディスプレイメーカーやスマートフォンメーカーを含め、部品から製品までを一貫して作り上げるという、モノづくりの原点に回帰するなど、ビジネスの考え方を見直すべき時期にきているのではないか」と指摘した。
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