外国人就労拡大で際立つ日本の「ブラック国家ぶり」:世界を「数字」で回してみよう(56) 働き方改革(15)(4/10 ページ)
ここ最近、連日のように報じられている「外国人労働者の受け入れ拡大」。メディアで報じられている課題はともかく、この外国人就労拡大で際立っているのが、日本の「ブラック国家ぶり」です。このブラックぶりは、驚きを通り越して、むしろすがすがしいほどなのです。
日本の労働人口の減少は補えない?
外国人労働者は80万人増えている訳ですが、日本の人口が、ここ10年でどれだけ減ったかというと、ざっくり150万人減っています。
しかし、この減少は、私に言わせれば、まだまだ『あらあら、まあまあ、お可愛いこと』の範疇(はんちゅう)を出ません。以前、私は、2070年までの人口予測結果を、出生率(1.44)を使って算出しました。本当の恐怖はこれから始まるのです。
日本の労働人口の減少を、現状の外国人労働者(の増加)だけで担保することが、相当に厳しいであろうことを理解して頂けると思います。
加えて、「日本国が、現時点においても魅力のある働き先となっているのだろうか」という疑問があります。
私たちの多くは、外国人労働者というと、資格外就労者、不労入国者、そのあっせんブローカーとかの「不法就労」に対するネガティブなイメージを持っていることが多いです。これは、テレビのドキュメンタリー番組が、その手のコンテンツを多数作成し、放映していることも原因と思われます。
しかし、実際のところ、現時点の外国人の不法就労者は、バブル経済の時と比較すれば、非常に少ないです。現時点では、合法な外国人労働者に対して5%程度と推定されます。
この図を眺めていると、これらの不法就労者の下図が、日本の景気や施策と強く連動していることが分かります。私は、上記グラフを見て、3つの変曲点(1991年、2005年、2011年)を眺めながら、以下の5つの仮説を立ててみました。
1991年のバブル崩壊後、不法就労者は減少しています。日本人労働者ですら職を得るのが難しいという状況でしたし、さらに、2005年には、「安全/安心な国」という観点から政府、地方自治体、警察などによる不法滞在者の一斉摘発が始まったということもあり、不法就労者は一気に激減しました。
その一方で、上記(2)(3)(4)のように、不法就労者自身による、戦略的撤退や政府による合法化(在留特別許可制度)などによって、不法状態から脱したケースも多いと考えられます。
そして、これは100%私の仮説なのですが、世界から、『日本はもう「魅力のある労働市場」と見られてはいないのではないか』ということです。
以前、東南アジア各国の経済成長率の資料を見て驚いたのですが、現在日本が、2%を達成できずに苦しんでいるところ、ラオス、カンボジア、ミャンマー、フィリピン、ベトナム、インドネシアでは、軽く5〜7%を超えています。
そもそも、言葉の壁があり、物価も高く、そして、東南アジアの人に対して十分な敬意を払っているとは言えない日本なんぞに、誰が好きこのんで来たいと思うでしょうか ―― 違法に入国し、強制帰国のリスクを払ってまで。
「我が国が、東南アジアから見捨てられつつある」という仮説を置くと、政府の働き方改革の「外国人活用」に関する日本政府の取り組みは、実に理にかなったものに見えてくるのです。
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